================================================================ パネルセッション 議題:「キャリア系VoIP電話サービスの技術的考察」〜「電話」としてのVoIP〜 7月26日15:50〜17:30 パネルチェア 松島 聡さん(日本テレコム)  パネリスト 田中 良和さん(日本テレコム)        田中 健二さん(フュージョン・コミュニケーションズ)        森 利行さん(JENS) ロガー 佐々木 武彦 (ソニー) 宮園 卓 (ネクストコム) ================================================================ ---------------------------------------------------------------- 松島 聡さん(日本テレコム) 議題:この度の企画理由 ---------------------------------------------------------------- VoIPにより既存交換サービスが様変わりしている。 有望なVoIP技術を紹介するとともに PSTNとIP電話の融合モデルを踏まえIPネットワークとの関わりを技術 的に考察する。 ・アジェンダ  ・VOIPチュートリアル  ・VOIP事情(電話会社的アプローチ、ISP的アプローチ) また、最終的にこれからのVoIPがどうなっていくかをディスカッションしたい。 ---------------------------------------------------------------- 田中 良和さん(日本テレコム) 議題:VOIPチュートリアル〜 ----------------------------------------------------------------  アジェンダ   1.概要   2.メディア   3.プロトコル ・VOIPとは    音声をIP上で転送する技術である。 ・回線交換とVoIPの違い    (1)回線交換    ・・・時間的に同期(タイムスロット)を利用    (2)VoIP ・・・IPパケット単位で転送(遅延や順序逆転の可能性がある) ・固定網と移動網    (1)固定網    (2)移動網    ・・・ユーザの所在地は契約キャリアのみしかわからない。(DBにより登録) ・VoIPの分類   ●機能面での分類     (1)クライアント(IP端末)接続機能       (2)PSTN-IP間相互接続   ●サービス性での分類     (1)インターネット電話(安かろう悪かろう)     (2)移動体     (モバイルIP等に取り組みがはじまっている。どのサービスに適応するかは 今後の課題)     (3)固定電話   ●既存音声サービス特徴     (1)固定電話      ・・・PSTN(高品質)      ・・・ライフラインとしての重要性      ・・・高価(権利等々)     (2)移動体系      ・・・品質はよくないが、あまりある利便性がある。      ・・・ユビキタスネットワークを先に具現化している。      ・・・手数料がかさむ。     (3)インターネット電話      ・・・移動体と同等な品質。      ・・・安かろう悪かろう。 ・VoIPが提供するサービスとは?     (1)設備投資は必ずしも安くない。     (3)従来の音声サービスと比べ、往々にして機能的制約を与える場合がある     (2)データ系アプリケーションサービスとしての親和性が高い。  →現存するサービスの置き換えではなく新たに市場を開拓できるサービス   でなくては意味がない。    ★新たな市場として以下があげられる。     (1)P2Pアプリケーションとしての展開     (2)無線LAN上での音声サービス     ・・・モバイルとの相乗効果     ・・・はじめはビル内、SOHO向けソリューションでノウハウ構築 ●VoIPのメディア系(技術的要綱)    VoIPはUDP/RTPが使用される。    ヘッダが大きくなるため交換効率は悪い。  ・CODEC    音声をデジタル化する規格        CODECの種別     (1)G.711 ・・・非圧縮方式、aLaw、μLawがあるが、国内ではaLawが一般的     (2)G.729     ・・・VoIPではよく用いられる     ・・・a/abの相互接続に難がある     (3)G.723 ・・・723.1が一般的  ・パケット化周期とペイロード長    各規格により違いがある。    ・・・サービス性により選択  ・遅延   VoIP特有の問題    リアルタイム性が損なわれるため、どこまで抑えるかが課題        遅延の要因としては    (1)パケット化遅延(GWでの音声IP化の遅延)    (2)伝送遅延(ナローバンド等々)    (3)IPノードのキューグ    (4)シッタ(揺らぎ)    等がある。  ・ジッタ     ネットワークにより、遅延やパケット順序逆転が発生する。     受信側GWのジッタバッファにより遅延の吸収、並び替えを行う。     →バッファ値が大きくなれば、遅延の要因となる。     →バッファ値を小さくすれば音質低下につながる。  ・音声品質     上記遅延、品質のボトルネックを考慮しネットワーク構築をすることが必要となる。     050帯(VoIP用)番号取得の際には遅延条件が厳しい。  ・音声品質評価方法     音声品質に影響を与へる要因として     (1)遅延     (2)エコー     (3)パケットロス     ここの要因を相互作用させて総合評価する必要がある     音声品質方式     (1)MOS     ・・・被験者への5段階評価方式     (2)PSQM     ・・・in/out信号(脳の信号)を近くモデルを用いて客観的に判断     (3)PESQ ・・・PSQMのモデルを改良     (4)R値      ・・・音質劣化要因をパラメータ化し集計。        行政サイドの意向で日本はR値を基準とする方向ではあるが、        現時点ではその基準がはっきりいないため        各キャリア困惑している。 ●シグナリングの方式  ・VOIPのシグナリング  (1)H.323    ・・・一般的  (2)MGCP   ・・・大規模GW管理  (3)MEGACO   ・・・(2)をさらに拡大、音声品質以外のストリームも意識している。  (4)SIP  さらに、PSTNとの相互接続としてのSS7などもある  ・ISUP    ISUP 発行・切断などの呼制御のほかのに回戦閉塞・回線 リセットなどの保守系としても利用    MTP  信号送受信などの下位レイヤ  ・INAP/MAP    INAP/MAP 固有のアプリケーション領域    TCAP   トランザクション管理    SCCP コネクションレスでの通信を確保 MTP    信号送受信などの下位レイヤ ・SIGTRAN SS7のスタックをIP上でエミュレートしましょうという動き VoIPでINサービスを提供する。  ・H323    関連プロトコルの総称  ・H323の動作    ゲートキーパーとのやり取り    それぞれのGWからゲートキーパへハンドシェイクを行う。  ・H323オプション(H323のやりとりは非常に煩雑)    a)ファーストスタート    b)H.245シーケンス    c)GKルーテッド信号    ・SIP    サーバメッセージの種類の簡略化したもので、さまざまな    アプリケーションへ応用がきく。  ・SIPとH.323との違い  標準化団体、ベース環境、データ形式、プロトコル体系    トランスポート層などに違いがある。 ・機能配備    (1)SIPサーバ(登録サーバ機能とSIPサーバ機能がある)    (2)ロケーションサーバ     参考)リダイレクトモード  ・MGCP/MEGACO   IPDC+SGCP →MGCP   MDCP+MGCP+NCS →MEGACO ●まとめ  ・VoIPには以下3つの特性がある  (1)電話のように専用網を構築する必要がなく、柔軟にネットワークを   構成することが出来る。  (2)VoIP特有の品質劣化が存在するため、エンドエンドでの品質に注意   する必要がある。  (3)シグナリングはH323に代わりMGCP、SIPが普及しつつある。  ・プロトコルアーキテクチャにより方向性にも違いが出てくる。   MGCP/MEGACOはGW制御に重きをおいており、PSTNとの相互接続には強い。 VoIPの方向性は様々である。 ---------------------------------------------------------------- フュージョンコミュニケーションズ 田中健二さん 議題:VoIP事情(モチベーション、現状、今後等々に関してご紹介) ---------------------------------------------------------------- VoIP電話に「安い」というイメージを持っていらっしゃる方が多いと思う。 そのシステムがどのように動いているのか、どのようにあるべきか議論していく。 ・なぜフュージョンが電話サービスを始めたか   1985年新電電設立より、価格破壊が始まった400円→250円   当時は画期的であった。   マイラインにより電話の中でがらがらポンが発生した。    ・・・ベンチャースピリッツよりサービス開始       ただ、安かろう悪かろうでは、なくどのキャリアよりやすく、       クオリティー、スケーラビリティーを、機動力を売りに 多くの旧新電電のエンジニアが熱き思いで作った会社です。 ・サービスに求められた要件   (1)ネットワーク構築コストを削減する事    IDXC等を利用せずファーストイーサネットを利用 交換機を導入するより、ソフトスイッチを利用したほうがすべてのシス テムを統合化でき、長期的に見て結果的に安くなる。   (2)多様ネットワークを構築することで、フレキシブルネットワーク構築が可能    ・・・センター側の帯域増強にも容易に対応 ・・・そもそも既存の電話交換機では加入者側がIP化できない?   (3)保守料金を削減すること     ・・・現状のIP技術で容易・安価にセキュアな環境を構築できる ・・・監視もSNMP等で行うため、ISP運用管理者が即席電話運用者になれる。 (当然最低限の電話についての知識は必要) ・VoIP開発時の要件   (1)電話屋的アプローチ    ・・・呼はあふれさせない事    ・・・スケーラビリティー(電話番号、課金方法多様性)    ・・・基本的に既存の電話と同じサービス、品質が必要   (2)IP屋的アプローチ    ・・・広帯域    ・・・冗長化 基本的にTier2に求められる条件と同じである。 ・構成図    加入者----PSTN----C4----NCCIP----C4----PSTN----加入者    C4(クラス4ソフトスイッチ)・・・中継交換機(VoIP用交換機)を意味する。  NTTがほとんどである。     ・ワンステージダイアル(直接相手先番号をダイアルする)をするためには、NNI接続が必須   メリット (1)NTTへのアクセスチャージは4円強        (2)今までと同じ電話の掛け方であることが重要   デメリット(1)相互接続交渉が必要(NTT、他事業者)        ・・・交渉だけで1年や2年はあたりまえ。        (2)事業者間清算による料金システムが必要        ・・・すごく複雑。 ・現状モデル  (1)サービスの位置付け(電話サービスを中心とする通信事業)  (2)接続形態(NNI、UNI)  (3)使用プロトコル(G.711) (3)エコーキャンセラーにて吸収  (4)DiffServ等々の各種により改善  (5)セキュリティー(FireWallを導入) ・遠い未来の話 PSTN一部依存型IP電話(ADSL/FiberからIP layerで接続) PSTN完全非依存型IP電話(P2P通信に電話番号が付与) ・・・電話番号を取得できるレベルのQoS(帯域・低遅延)を確保できるか    ・・・認証方法等に関して注意が必要    ・・・QoSをどのように確保するか    ・・・既存客のみだけが切り替わるのを防ぐためにどのような時期に 新サービスリリースをするか(既存の電話交換機との兼ね合い) ・まとめ(個人的見解)  (1)現状:   中継区間を圧縮しつつ既存の使い勝手を良くする。  (2)1年程度先:   ハードフォンによるIP電話(QoS保証)インターネット電話への対応。  (3)2〜3年先:   NTT地域接続 ISP同士との相互peeringによりSIP等を流す。   定額制になれば可能ではあるが、結局政府、NTT次第。 ---------------------------------------------------------------- JENS 森利行さん 議題:VoIP事情(モチベーション、現状、今後等々に関してご紹介) ---------------------------------------------------------------- ・IP電話サービスを開始したいきさつ   97年8月からトライアルを実施し、9月から商用サービス   公専公ができるようになった次の日にサービスを開始した。 ・VoIPでのサービス展開のモチベーション  (1)1996年個人向けインターネット接続サービス2,000円で開始    ・接続料に大きく依存したビジネスモデルからの脱却の必要性    ・手っ取り早いキャッシュを稼ぐために新規サービス開発に充当したい  (2)個人的に燃えていた。 ・サービスに求められる要件  ・既存ネットワーク利用効率の最大化  ・時間をかけないでサービスできるもの  ・十分な利益幅を得られるもの    →電話しかないでしょう。 ・システム要件〜心の中にあったもの〜  ・過去、H323くらいしかなかった  ・T1利用できるGWがようやくでてきた  ・利用している機器を利用したい  ・QoSなんてない時代。  ・信頼・安定性には気をつける  ・スケーラビリティーがあること  ・標準化は待てない。    →お金を稼ぐには一番のりが大事でしょ。   ・現在の実現モデル1  セカンドステージダイヤリング(特定の番号をかけた後、相手先の番号にダイアルする)   法人向けにはLCRを独自につくって間に挟むことで電話と同じ感覚でできるようにした。 ・現在の実現モデル2  ・各国各拠点にGatewayを配備  ・インターネットゲートウェイはFireWall等を利用  ・ピアリング(事業者間接続、ピアリング→NTTCOM、AT&Tなどとの連携)  ・国外でもインフラを提供。独自のプロトコル変換装置を独自設置 ・現在の実現モデル3    (1)PSTN接続方法(UNI, UNI/NNI)    (2)プロトコル(独自。コーデックに関しても独自12kbps)    (3)QoS(バックボーンを設計する上で実害が出ない程度を考慮し        帯域を用意する。また別線、別VCを使用した)    (4)セキュリティー(FireWallを利用) (5)利用者開拓(独自のマーケティング戦略) ・将来の実現モデル   なぜ、大規模展開に慎重なのか?   (1)NNI接続を考慮するとシステムコストには安価ではない   (2)マイライン競争にぶつかると1ユーザあたりの売り上げで首を 絞めることになるため参入には慎重   (3)もともと電話会社になる予定はなかったから 今後の展開   ・目的方針を明確にしないと、VoIPのメリットがでない。   ・新しいサービスはどんどん提供。   ・ISPの見地からするとアメリカではアップデートがされていない、システムに多く投資 するのではなく利用できるものを利用する方法にてシステム構築。 ---------------------------------------------------------------- ディスカッション ---------------------------------------------------------------- 松嶋聡さん(日本テレコム) 「各プレゼン内で将来の部分が弱い印象を受けた。  VoIPが将来どうなっていくか  また、そのために解決していかなければならない問題点について  各パネリストに一言ずつコメントを頂きたい」 田中健二さん(フュージョンコミュニケーションズ) 「会社でもVoIPのプロダクトをもっているが、  今すぐFusionのSoftswitchと接続するのは困難であるように、  現状の問題点は現在あるSoftswitch間のInteroperabilityが弱いことがあげられる。  しかしVoIP〜PSTN網とのインターワーキングについては  各キャリア着々と提供されていくであろう。  どちらにしても会社としてどのようにVoIPを展開するビジョンが重要である。」 田中良和さん(日本テレコム) 「今後各ISP間で(IPのPeeringのように)VoIPの交換をし始めるとしたら  互いに共存できる関係が作れるのではないかと思う  現状ではネットワーク屋としての考えや、お客様意識も異なり難しい部分が多いが、  ここを乗り越え、うまくまとめられればハッピーになれる。」 森利行さん(JENS) 「VoIP技術を過信しないことが重要である。  VoIPによって劇的に安くなるということはありえないという事を  きちんととらえないといけない。  現在のように各キャリアが固定網から一気にVoIP化を推し進める動きには  疑問を感じる。このままでは、自分たちの首を絞めることになりかねない。  一歩引いて冷静に考えることが重要であろう。」