1.タイトル AkitaIX Report & ANOG UPDATE 2.発表者 佐々木伸也 (秋田県工業技術センター) 記録者 鈴木暢 (株式会社インターネット総合研究所) 3.時間 2003年1月24日 09:10〜09:30 4.発表の概要 - 秋田地域IX(@NAP)に関する報告 * アーキテクチャ * 構成 * ルーティング * サービス - ANOG(The Akita Network Operators' Group)に関する報告 * NAMAHAGE Projectについて 5. 発表の流れ - 秋田地域IX(@NAP)に関する報告 - コンセプト 秋田のIXが稼働し始めました。 新聞などにも掲載されました。 行政(秋田県)が民間事業者に委託する形で運用 民間に事業委託する理由としては、 ・民間のアイディアのフル活用 ・事業の活性化・加速化 ・コストの圧縮 の3つがあります。 コストの問題ができましたが、 どうも、行政に対する機器価格と 民間に対する機器価格に差があるようです。 - アーキテクチャ MPLSをベースにしたアーキテクチャを採っています。 しかしながら、トラフィックエンジニアリングについては どこまでできているかは不明です。 上位接続はOC-48相当の帯域を用意しています。 網はマルチベンダー環境によって構成しています。 ラベル広報はLDPかRSVPが利用可能です。 このIXにはデータセンターサービスもあります。 - 外部ネットワーク構成 外部との接続は、 ・東京向け OC-48相当帯域の回線 ・札幌向け FastEthernet相当帯域の回線 の2つがあります。 東京では ・JPIX ・SQUARE(Play Online Exchange) ・その他通信事業者 と接続を行っています。 北海道ではHotCNと接続を行っています。 秋田ではNTT東日本のフレッツ網と接続しており、 POIを収容することができるようになっています。 - 内部ネットワーク構成 iBGPは東京のLabel Edge Router(LER)と 秋田のLabel Edge Router(LER)との間で フルメッシュにピアしています。 eBGPは、東京のLERとJPIXおよびSQUARE、 秋田の2台のLERとHotCN、 秋田の2台のLERとIX接続ISPとの間で ピアしています Layer2のPathは 秋田のLERから東京のLERまでのびています。 これを利用することで、 JPIXと接続することが可能です。 Layer3のLabel Switched Path(LSP)は 秋田の3つのLERとの間ではフルメッシュに、 また、秋田の3つのLERからIX接続ISPラック、 HOTCN、東京のLERとの間にLSPが伸びています。 このIXに接続しているISP同士の接続は IX接続ISPラックを接続しているLERを介して接続します。 今朝(2003/1/24)の新聞に乗ったが、 地域の8つのISPをIS接続ISPラックに収容している。 (秋田IXのコア設備とハウジングルームの様子を写真を用いて紹介) コアルータは人ひとりが入れるほど 大きな木箱に収められて納品されました。 - ANOG(The Akita Network Operators' Group)に関する報告 - ANOGとは何か ANOGとはAkita Network Operators Groupの略です。 1998年から活動しています。 詳しくはJANOG8で報告させて頂きましたので、 ここでは省略させて頂きます。 基本的にMLベースの活動をしていますが、 メールの流量はあまりありません。 実際に会って話をするような活動がほとんどです。 - NAMAHAGE Projectについて ネットワークアプライアンスボックスを作ろうという プロジェクトです。 このプロジェクトを企画した理由としては、 箱物を制作している企業が儲かっているように 見えることが挙げられます。 いわゆる地ルータの開発と言えます。 - 地ルータのターゲット ターゲットとしては、 MPLSエッジデバイスを想定しています。 BGPをサポートし、大規模なMPLSルータよりも 小さい規模を想定しています。 - 地ルータのハードウェア この装置のトラフィック制御をするプロセッサを作成するに当たり、 実際に基板から起こそうかと思いましたが、 実際にはIntel のIXPシリーズを利用しようとしました。 FPGA上のNPU-IPを利用します。 また、サーチエンジンコプロセッサを利用します。 - 地ルータのソフトウェア この地ルータのソフトウェアには リアルタイムカーネルエクステンションを施した 組み込み用途のlinuxか。VxWorksをベースとする仕様です。。 これにzebraかZebOSを実装し、RoutingとMPLSを制御します。 - 地ルータのその後 しかしながら、プロジェクトは停止しています。 それでも、プロジェクトは再スタートしようとしています。 方向としては、OPEN Hardware、 OPEN HDLという方向で進めようとしています。 ただ、同じ思想で進めていたPDAのプロジェクトが頓挫してますね。。 - 上記の報告に対する質疑応答 Q.ANOGのメールトラフィックはどの程度あるのでしょうか? A.メールのトラフィックはほとんどありません。 工業技術センターが民間企業のサポートをしており、 そこでコミュニケーションができてしまうのと、 そのような地域性があるというのが原因のようです。 Q.ANOGに新しいメンバーが入会するパターンを教えて欲しいです? A.なかなかメンバーは増えていません。 メーリングリストの登録アドレスが変わるという例は多いが、 増えたという事はあまりありません。 秋田の企業間で人材の流動が激しいようで、 そのような理由でメールアドレスが変わることがあるようです。 (なかなかML上で発言しないと言う)地域性があることから、 ローカルコミュニティの立ち上げには苦労があります。 Q.なぜANOGを立ち上げたのでしょうか? A.これまで、所属している方々は簡単なオペレーションこそしていたものの、 技術レベルが低い傾向がありました。 そこで、技術レベルの向上を目的として、 情報の共有ができるようなもくろみを持って立ち上げました。 Q.ANOGを立ち上げたことで技術向上はしているか? A.していると思います。 Q.NAMAHAGE Projectはどの程度進んだのでしょうか? A.試作器は作っていません。 作ろうとした経緯はあります。 設計のアウトラインや、バスの設計、 ZebOSのライセンスを受けるところまでは来たが、 作るところまでは至っていません。 Q.なぜProjectが止まってしまったのでしょうか? A.このプロジェクトに関わっていた とある民間企業さんの事情により停止しています。 しかしながら、完全にプロジェクトが止まったわけではありません。 良いビジネスモデルができればいいと思っています。 Q.ハードウェアをオープン化されるとのことですが、 このハードウェアを他の中小企業が カスタマイズして利用することがその意図でしょうか? A.アーキテクチャを公開して、カスタマイズしてもらうとか、 民間企業さんの技術努力で解決できるところはあると思います。 このようなプロジェクトを進めることで、 米国に押されている日本のネットワーク機器に関する技術が 向上するのではないかという密かな期待を持っています。 また、県が主導して物を作るというのは斬新なことではないかと思っています。 Q.秋田の人口はどの程度か? A.秋田県の人工は約130万人です。 秋田市だけに限定すると約30万人ほどです。 中央集中ではないところが地域IX向きですね。(菊池先生) Q.NAMAHAGE Projectで作成しようとしている機器のスペックについて考えると、 (既存の物にはない)気の利いたルータが欲しいと思って 作ろうとしたのとしたのかと思うが、いかがでしょうか? A.その通りです。 既存のMPLS機器は大きく高価な物がほとんどなので、 気軽に使える機器があれば良いと思っています。 Q.品質管理等を考えると、大手のベンダーにお願いした方が 楽に手に入ると思いますが、 わざわざ秋田で作ろうと思った理由は何でしょうか? A.物を作ろうとした場合には、その物について深い知識を持たないと作れません。 例えば、ハードウェア設計の方も、RFCを読むなど、 機器制作に伴う技術向上は著しい物があります。 そのような効果を狙っています。 しかしながら、機器販売に重要な流通・サポートをクリアするのが問題です。 ベンダに託して販売するのが良いのでしょうか? Q.ANOGのメーリングリストに情報が流れていないと言うが、 工業技術センターの強みでもあり、弱みでもないでしょうか? 機動力のある展開に足かせがあるような気がしますが、いかがでしょうか? A.(オフラインとオンラインの)バランスは重要だと思うが、 同業者でも顔が通じていたりしているかなり狭いコミュニティで、 あまりメールで会話するような必要はないようです。 現在、うまくバランスを取って運営しています。 Q.秋田IXはIPv6には対応するのでしょうか? A.県の方からリクエストは出ています。 しがらみもありますので、対応する必要はあるでしょう。 IPv6のFull Routeを持って運用するかどうかは決めていません。 DATACOAさんにがんばってもらいましょう。(笑) 6.ロガーの所感 秋田県という地方自治体が主導する 地域IXが新たにスタートしたというのは、 他の地域で同じようなプロジェクトを進めている方々にとって 大きな推進力になると思われます。 反面、地域コミュニティを牽引していく難しさや、 地域密着型ハードウェア開発の中断など、 地域におけるプロジェクト運営の難しさがにじみ出る 興味深い発表であったと思います。 小型MPLSルータの需要は少なからず存在するはずですので、 NAMAHAGE Projectが何らかの形で復活することを期待しています。