1.タイトル 地域 vs 東京? 2.ロガー  鈴木 信哉(NTTコミュニケーションズ株式会社)  藤田 稔 (NTTコミュニケーションズ株式会社) 3.発表者 詳細な紹介については,PDF参照  パネルチェア:前村 昌紀(フランステレコム)  パネリスト :菊池 豊(高知工科大学)         鈴木 常彦(東海インターネット協議会)         鶴牧 悟(ソフトバンクBB株式会社)         浜田 泰幸(NTTコミュニケーションズ株式会社)                                   (敬称略) 4.時間  2003年7月24日(木) 16:00〜17:30  発表   前村 昌紀:16:00〜   鈴木 常彦:16:05〜   前村 昌紀:16:10〜   浜田 泰幸:16:15〜   鶴巻 悟 :16:22〜   菊池 豊 :16:30〜   質疑応答 :16:36〜 5.発表の流れ,論点,議題 MLリストで論議をかもした「地方 vs 東京」の構図。 一方では,「それは東京の論理だ。」 また一方では「地方の実情は・・・。」といったようになかなか相容れない部分も 多い。そういったMLの内容を再現し,また,そこから議論を発展させていく。 今回はBGP,MPLSといった技術的な部分ではなく,考え方や概要設計といったフェーズ から問題提示を行い,そこからパネラー,また会場全体でディスカッションを行う。 発表は各自5分。残りの時間は全てディスカッション。 6.発表の流れ <前村:16:00〜16:05(PDF資料参照)> 今回の発表の流れの説明。 ・グローバルISPの立場から、東京対地域で気になるところを指摘したい <鈴木:16:05〜16:10(PDF資料参照)> 自己紹介 東海インターネット協会  名古屋を中心にインターネット関係  昔、TRENDYという地域ネットワークをやっていた  会場に数名覚えている人あり  今日のような(商用の)状況には面食らっている ・高速な地域ネットを要求するアプリケーションとして以下のようなものが考えられる   −ThinClient   −RemotePrint   −DistributedStorage   −MemeComputing ・現在のPCは初心者に扱いきれるものではないので、ブロードバンドを用いて  ThinClientを提供するってのがいい。 ・本日はソリューションの話まではしない ・P2Pのノードは東京集中ではなく、地域に分散している。 ・広帯域,低遅延を実現するために,地域ルーチングがニーズとしてある。 <前村:16:10〜16:15(PDF資料参照)> ・フランステレコム的には大きなISPと少なく安定したピアを行いたい ・ピアリングする場合,お互いにメリットが無ければならないため,ある程度の条件が  必要  (フランステレコムでは500Mbps以上のトラヒック交換,複数拠点でのpeer確立等) ・顧客経路は売り物であるため,タダであげるわけにはいかない ・小規模と大規模のピアでは一般的にはメリットが釣り合わない  −例えば日本のISPとフランステレコムの日本(アジア?)の経路で釣り合い? ・HKIXやシンガポールのコロケーションにルータをおいて線を引くことのメリットを  いつもつつかれた。地域IXに国内大手が出て行くのも同様に辛いのは想像に難くない。 ・地域バックボーンISPが、国内大手と対等に張り合うこともあるのでは? <浜田:16:15〜16:22(PDF資料参照)> ・今回は1営業としてプレゼンテーションを行う ・地域  −トラフィック伸び率高い,1年半で6倍以上  −折り返しも多い,P2P? ・上り下り  −国際に関しては従来の1:4関係  −その他は1:1に近づいている,P2P? ・全体の帯域の中で地域の量が増えてきている ・IXの1ポートが1ISPになっていてIXじゃない ・お客様がもうかる,その上で弊社が儲かるモデルが欲しい  −メガ単価を聞かれるのは疲れた <鶴巻:16:22〜16:30(PDF資料参照)> ・前回のJANOGからもトランジットは順調に伸びている ・トランジット先のISPとその先のISPとの帯域が足りなくなってきていて,  トランジット先のISPから泣きが入っている ・今のペースで進むと来年は2倍ではすまない ・県間も10Gで結ぶ必要がある? ・40Gがでても間に合うかわからない ・IP電話やゲームなどのアプリは高品質な回線を求める  −従来はユーザ〜IXだが,今はエンド〜エンドの品質が求められる ・YahooBB IXについて  −国内IX,IX同士の接続はやらない  −同じルータに収容できるようなサービスの提供,2台目も辛い,10Gは使い切れない <菊池:16:30〜16:36(PDF,PPS資料参照)> ・地方では生活と政治が身近  −人が生きることと周りとの関係は密接 ・地方はレイヤーの壁が壊れている  −東京はお金→サービス  −地方は人間関係など複雑 ・広義の意味では地域内でコミュニケーションをとるための1つとして,地方では  地域IXが求められている ・地方と東京でのトランジットのメリットが違う  −地方:フルルートをもらわないとBGPの意味がない  −東京:ポート1つつなぐとその地方はすべてまわせるといったメリット <ディスカッション,質疑応答:16:36〜17:30> ・菊池さんのプレゼンがまとまっていたが,地域IXプロジェクトを推進する際に  こうするべきみたいなのってある?ドライブの仕方など(前村)  −地域はひとりのひとがいろんなレイヤーに関っている(菊池)  −ゴールとしては地域全体がこれを作るとハッピーになれるといったものが必要   (菊池)  −とはいうものの、直近には地域ISPが元気になることが必要,そのためには収益構造の改善が必要(菊池)  −そうすると先程浜田さんが言ったようなメガ単価いくらという話に結局落ちてしまう(菊池) ・私の最初の発表で示した地域バックボーンとしての地域IXがあれば使うんじゃない?(前村)  −大きくなって地域バックボーンが増えた時が問題(菊池)   東京 vs 地方が県庁所在地 vs 地方になってフラクタル構造は変わらない(菊池)  −地域ISPが成り立たないのは東京一極集中により、地域のコストが(東京に比較して)   大きくなってしまったから(鈴木)  −現在の地域ISPはローミングやアウトソーシングなどにより、(自ら)ルーティング   などは行っていない。真の地域ISPとしてがんばってるのはCATVくらいに   なってきている。(鈴木)  −地域ISP等をやろうとしてもIPアドレスの管理等の問題があってなかなか難しい   (鈴木)  −再奮起しようとしても,構造が出来上がってしまっているし,IPアドレスがない   (鈴木)  −地域に求められているのは地域ISPではなくL2やMPLSでL3以上のものを乗っけられる   地域網やMANプロバイダのようなもの(鈴木)   ・イメージとしてはNTTのフレッツ網(鈴木)   ・そういったものが地域に必要,その上で大手とつなげる(鈴木)   ・1から10年前にやったことをやるのは辛いと思う(鈴木)   ・地域が地域として何をするかは自分達で考えるべき(鈴木) ・地域ISP vs 地域IXのようになるのか,BBIXはどう?(前村)  −競合のつもりはない,手に手を取り合うようにやりたい(鶴巻)  −地域のものにあわせたい(鶴巻)  −まずは集約,そうすれば大手も集まる(鶴巻) ・7箇所の次はある?(前村)  −7箇所が順調に行けば,その中でも需要の多い部分に関しては補強,増強(鶴巻) ・アドレッシング問題は?(前村)  −基本的には県単位で綺麗にわけている(鶴巻)  −初期割り当てをうまくやれたのが既存ISPとの違いではないか(鶴巻)  −苦労はしたが,比較的地域ごとに/17〜/18くらいにはうまく分けられている   (鶴巻) ・MLでは地域IXを作るとP2Pのような暴力的なトラフィックが収まるのでは?という話が  あったが,浜田さんはどう思いますか?(前村)  −内部トラフィック交換が増えているのが多い,折り返しよりも遅延が問題(浜田)  −1ISPではうまくいってもISPが増えると困るのでは(浜田) ・BBIXは誰とつなぐつもり?つなぐ相手がいないんじゃない?(MEX 高田さん)  −現状フレッツ,ADSLの出口につながっているISP(鶴巻)  −東京ではYahooBBがピアしているISPを考えている(鶴巻)  −地方に関しては現状ないんではないかと思う(鶴巻)  −ASを持たずにISP事業をやっている所などはつながる(鶴巻) ・地方はインフラを持っていないんでは,インフラを卸で買っている,世の中では  YahooBBとOCNとあといくつかくらいしかないんじゃないか,BBIXにせずに  プライベートピアにすればいいんじゃない?(会場)  −プライベートピアは敷居が高い(鶴巻)  −利害関係などを考えずにもっと楽に使えるものにしたい(鶴巻) ・プライベートピアするだけのトラフィックがなければIXにつなぐ意味がないのでは  ないか?結局YahooBBだけでつなぐSWになるんじゃないのか?(会場)  −地域ISPだけじゃなく,CATVもネットワークを持っている(浜田)  −YahooBBのトラフィックを抜くだけで喜ぶ人はいるのではないかと思う(浜田) ・CATVにはKDDIのセット売りが多いんじゃない?(会場)  −ピアリングの概念が変わっていくべき,今求めるピアリングはASとASのピアでは   なくASの(地域)部分集合でのピア(鈴木)  −ASをひとかたまりで使うのは厳しい,大手地域 vs 地域ISP(鈴木)  −YahooBBにはぜひとも大学と組んでもらいたい(鈴木)   ・大学はSINETに縛られている(鈴木)   ・東海地域では1.5Mbps以下が7割以上(鈴木)   ・100Mbps安くするからつなごうよ(鈴木)  −SINETと100Mbpsでつなげば地域とつながらなくなる(鈴木)  −学生は家のほうが早いからって学校にこない,それほど遅い(鈴木)  −コスト問題などから,SINETにつないだままでは、商用ISPには   (同等の回線速度では)つなげない(鈴木)  −YahooBBから大学に地域分だけでもまわして欲しい(鈴木) ・なぜ地域IXは既存のコミュニティとコラボしないのか?そういったものを基盤として  考えたほうが,システム的にも財務的にもいいのじゃないか?  (フュージョン 田中さん)  −地域(東海)に関してはCATVを基盤にしようとコーディネートしている(鈴木)  −地域内で閉鎖的(鈴木)  −CATV同士を接続するのがかなり難しい(鈴木)  −少しずつ進展しているが,接続後もギクシャクするところがあってなかなか   進まない(鈴木)  −自分達がどういう位置にいるかを把握していない(鈴木)  −まずは彼らを啓蒙するところからはじめている(鈴木)  −CATVとやろうと話はしている(鈴木) ・そういった話が続けばいいが,大手が小さいところを食っているので時間との  競争になるのではないか?(フュージョン 田中さん)  −地域が成熟する前に地域IXをやるのは困るとYahooBBには言った(鈴木)  −まずは地域がまとまることが必要(鈴木)  −そのためには地域のISP,メディアにはもう少し頑張って欲しい(鈴木) ・地域は地域性が進展を狭めている,IP電話も頑張っているがやっぱりOCNがいいとか  言われる  −なにかショックを与えないと,おじいさんおばあさんにNTT以外を勧めるのは難しい   (菊池)  −最近NTTは手回しがいい,人のいないとこにもBフレッツを引いている(会場) ・地域系だと言いたいことはあるが,技術的な視点,ビジネス的な視点,・・・視点が  多すぎる,そこで今日は技術的な視点で問題提起をしたい,トラフィックが  増えているが,トラフィックの中身は見ているのか?  −ある程度は確認している(鶴巻)  −HTTPは3,40%程度,最近はランダムポートでよく見えないが,やはりP2Pが多い   (鶴巻)  −OCN設計チームは見ていると思うが,営業の立場である自分は最近見ていない   (浜田)  −今回のプレゼンでは数値からP2Pではないかと思っている(浜田)  −浜田さん同様,見る立場にいないため見ていない(前村) ・どういったトラフィックが流れているかが大切,Winnyの速いインターフェースを  持ったものを地方に置けばそこにとりに行くのでトラフィックが減るのではないか,  また,DC内にP2Pサーバを設置し,トラヒックをデータセンタ内に閉じるという  方法もあるかもしれない(INTEC Netcore 中川さん) ・ブロードバンドというが,そろそろ100Mbpsの帯域をユーザに利用できるようなNW設計を  考えるべき  −広帯域を利用するためには,遅延が重要になる(INTEC Netcore 中川さん)  −遅延が10msecあるとTCPでは30Mbpsくらいしかでない(INTEC Netcore 中川さん)  −実際調べると,富山のリングサーバだとはやい,東京だと遅延がでておそい   (INTEC Netcore 中川さん) ・いろんな前提条件がある,トラフィックが増えた,P2Pが多い,DCがB向けに  行っているサービスのように,C向けのDC貸しでWinnyを利用させてはどうか,  フローごとにトラフィックが分けられる経路制御ができるようになるといい,  将来おこりうるマクロ環境への配慮が重要になると思う(JT 松嶋さん)  −地域には様々な特色があり,全国NWでやるのではなく地域NWでやるべきでは?   (菊池)  −田舎が独自色を出すようになったらおもしろい(菊池)   ・極端な例として、温泉地では温泉地の画像などトラフィックパターンが独自になってくるのではないか(菊池)  −そうなってくるとどこにでも地域で閉じた形が必要になっておもしろくなるのじゃないか(菊池)  −MemeComputingの考えかた,必要な情報が必要な場所に集まればいい(鈴木)   ・例えば音楽が好きな人のディスクにはその人の好きな音楽が集まるアプリが    あればいい(鈴木)   ・遠くにとりに行かないアプリが必要(鈴木)   ・遅延は消えないのでアプリでカバーする必要があるのではないか(鈴木) ・CDNなどの技術など,アプリを含めたNWの作り方はあるだろうしいいと思う  −P2Pはフリーだが,他ISPとの接続ポイントが東京/大阪であるため,網の構造的に   トラヒックが中央に集まるようになっている(浜田)  −今の網の作り方では解はでないが,網の作り方を変えることにより解を得る   こともできると思う,例えば地域で他ISPとの接続ポイントを作るなど(浜田) ・NWの帯域大きくなると遅延が気になる,SINETのネットワークでは近隣の  NW同士をつないでいる,Gigaだと遅延が小さくなってラッキーの世界ではなく  チューニングでカバーしているので努力が必要(SINET 松方さん) ・一方,個人の見解ではニュートラルの状態,マルチホーミングが複雑になる,  ロードバランスは?など問題が難しくなる,価値はあるの?(会場)  −マルチホーミングや地域IXの問題があることは理解して対応してきた   (SINET 松方さん)  −地域IXに関しては要望が最近多いので対応している(SINET 松方さん)  −複雑でいいから問題を解決するソリューションが欲しいという要望があれば   こちらも頑張る(SINET 松方さん)  −SINETが独立行政法人になれば問題は解決していくと思う(菊池)  −1ISPに近づいていくのではないか(菊池)  −SINETではそんなに拘束していないはず(SINET 松方さん)  −BフレッツやYahooを買って使っている大学もある(SINET 松方さん)   ・最近のNATは優秀(SINET 松方さん)   ・大きな会社でも同じ(SINET 松方さん)  −ADSLの終端とYahooの終端がつながればいんじゃない(SINET 松方さん)  −ADSLなどのアクセス線のシェアは研究している(SINET 松方さん)  −多様な大学の要求に対して努力している(SINET 松方さん) ・東京の大学ではOCNやSINET両方につないでいるところもある(会場)  −大学は勝手にやればよい(会場)  −地域の話をする際に,地域の経済的な活動が反映されてないのが問題(会場)  −地域のことは地域の人がでてくればよい(会場) ・東京の地域ISPをやっていたが,コストに見合わず,ISPから線を買った方がコストが  安かったため終了(会場) ・地域の行政が考えているIXとエンジニアの考えているIXは違う(東大 一井さん)  なので技術的な話ではなく,政治的な話を含めて考えるべき(東大 一井さん)  −行政:レイヤーの高い,地域活性化に利用できるようなものを考えている   (東大 一井さん)  −YahooBBもIXをやるならもっと政治的なレイヤーを含めたものが必要   (東大 一井さん) ・CATVや地方でASとったところは多い(会場)  −地方でピアもありえるのではないか(会場)  −大学でもASをとって,BGPオペレータを育てて欲しい(会場)  −ISPもBGPをやっているところによってくる(会場)  −v6になるとさらにアグリゲートが進んで地方は辛いんじゃないか(会場)  −難しいが,チャレンジする価値はある(前村) ・BIGLOBEではアクセス網との接続が東京・大阪の2局となっている(NEC 中原さん)  −現状の構成で考えると,途中でP2P等のトラヒックを折り返すような   インテリジェントなアクセス網を提供して欲しい(NEC 中原さん) 7.まとめ 今後もMLやJANOGの場を利用して議論して欲しい。 8.所感 様々な問題があるとは思うが,おそらくほとんどの人が東京1極集中ではなく, 地域でのピアやトラヒック交換に賛成なのだろうと感じた。 ただし,それがビジネスとして成り立つか否かという点になると意見が分かれて 対立するように思えたが,その点に対する議論が少なかったため,今後はその点に ついてもっと議論しても良いように思った。(鈴木) 地域 vs 東京と一言に言っても,様々な問題があるのだなと思った。両者が自分達の 視点だけで考えるのではなく,歩み寄ることが必要なのだなと感じた。 また,技術的な問題だけでなく,政治的,地域的な問題も非常に多く,線を引いたから ハッピーといった簡単な話ではないのだなと感じた。(藤田)