版数:2003.08.05-2版

1.タイトル
  spamメール対策の現状と課題

2.ロガー
  西永雄二 (㈱富士通北海道システムズ)
  高木宏悦 (NTTコミュニケーションズ㈱)

3.発表者
  中村素典 京都大学(パネルチェア) 
  山井成良 岡山大学
  安東孝二 東京大学
  北野利治 ディープソフト

4.時間
 2003/7/25
 発表:9:30~10:20
  質疑応答:10:20~10:45

5.発表の焦点・論点・課題

■中村氏(京都大学)

"SPAM"(大文字)は缶詰であり、メールのスパムは"spam"(小文字)
メールで届く迷惑なspamが昨今問題となっている
97年ごろから話題となり始めたが、徐々に問題点も変わってきた。

○メリット
・宣伝コストが安い。
・楽。
・匿名性。 等の理由からさらに増える一方である。

最近、一年で二倍強増えていることが観測されている。
種類は、financial、adult等色々有り。

○SPAMはナゼ嫌われているか
CPUやNWのリソースの問題よりも、
メールの読み込み振り分け削除の時間の浪費の方が問題
・重要なメールを見落とす
・成りすまし問題、踏み台なども

中村氏の場合。。実際に届くメールについて
全体で約2000/1日。この中から、重要なメールを探すのは大変。

○会場の皆様へアンケートをとってみましょう
・メール数が数百程度/1日な人
 -1000/1日を越えることもある人
・一般ユーザとしてspamに困っている人
 -何らかの対策をしている
・システム管理者としてspamに困っている
 -何らかの対策をしている
・対策をしたことが逆に問題になったこともある人。。

○スパム対策
3rd party relayの防止
 ウィルスチェックカとの併用時に注意
DNSによる発信アドレス確認
 不安定な相手だと受け取れないことも

ブラックリストサービス 個人では大変なので。。
・重要なメールが届かない
・品質問題
・巻添え、訴訟問題。 
等の色んな問題があり、さらに。。  

というのが昨今の状況である

○発表の論点
・spamの発信者詐称に起因するDoS対策(山井成良 岡山大学)
・大学のサービスという観点から(安東孝二 東京大学)
・スパム対策ソフトを販売されておりそういった観点から(北野利治 ディープソフト)

6.発表の流れ

■パネル発表:北野氏(ディープソフト)

ディープソフト社は韓国製ソフトの取り扱い・日本向け販売を行なっている会社。
韓国でのspam対策の状況を報告する。
韓国でのspamメールとして海苔屋さんからのメールが有名。

○質疑
安藤氏:spamメールを送って効果があるのかな?
北野氏:韓国の特殊な事情が背景にある。
安藤氏:韓国の人口は?
北野氏:北野氏:日本の半分くらいだが、インターネットユーザは日本より多いと発表されている。

韓国でのメールトラフィック量の70%がspamであるとの統計がある。(MSP調査)
韓国では、ISPはメールアドレスを配らない。
MSPの収益モデルはWebメールの広告収入である。
MSPは広告収入を得るためにメールアドレスを無料で配る。

韓国には、spam遮断ツールとspam発送ツールを販売している
マッチポンプな会社もある。

(韓国でのあるサーバのSPAMBlock統計画面を示し)このサーバのメール流量は180万/日であり、
そのうち120万通弱の役65%がspamである。メール流量は20通/秒以上でこのうち12~13通がspam
ということになる。
メールサーバはspamによるDOS攻撃状態である。

spam対策ソフトには2つの方式がある。
・ゲートウエイタイプ:一箇所でspamを遮断する
・メールストアタイプ:個人単位できめ細かく設定可能

ディープソフト社製spam対策ソフトは両方式を採用している。
(ゲートウエイタイプ+メールストアタイプ)
そのため、ゲートウエイで一括処理し、且つ、個人フィルタで細かく設定可能。

沢山の踏み台からいっせいにspamが届く場合、
メールのボディが同じかどうかをチェックし、spamとして判断している。
また、ボディに画像が一つ、のようなURL誘導型が最近は多くなっている。
そのため、メールに含まれるURLを追跡し、ページ内に好ましくない言葉が含まれるような場合には、
そのメールはspamとみなし遮断する。
 
○質問タイム

質問者:JPHONE 関矢さん
関矢氏:spam設備投資に数十億かかっている。(現状)
    DSLユーザさんが1分間隔でメールを取り直すのも問題。
    韓国ではどうか?
北野氏:同じメールアドレスはシャットアウトするような仕組みがある。
関矢氏:メール数に応じた対処をしている?
北野氏:きめ細かく(180万通くらい)設定している。
関矢氏:spam対策ソフトは、実際にはどれくらいまで耐えられる?
北野氏:現状でもCPU65%程度である。

質問者:国立情報研究所 松方さん
松方氏:spam対策としてもメールの閲覧には日本国内的には抵抗感が強い。韓国ではどうか?
北野氏:通信のプライバシーから、メールの内容への閲覧に対し抵抗はある。
    でも、守るべきものは守る必要がある、という考えもある。

質問者:水越さん
水越氏:ホワイトリストはユーザ単位?
北野氏:はい、そうなります。
水越氏:MSP同士のメールはツーツー(相互通信可能)ですか?
北野氏:そのような仕組みはない。一般のメールと同じにフィルタにかけられる。
 

■パネル発表:安東氏(東京大学)

大学でのサービスをするという観点から。

○背景
 自分のメールの中から大切なメールを探すのは非常に大変である。
 どれが大事なものか分からない。。
 特に英語圏からのメールはspamかどうかよく分からず、困っている。
 spamに負けた。⇒spam対策ソフトを買った。
 皆さんも困っていますよね?

○大学でのメールサーバ運用するにあたり
 大学でメールをやると学生、先生を両方使うがISPほどシビアではない。
 一番多いのはopen relay。
 最近はウィルスで勝手に送りつけるものがあり、この場合
 DHCPでアドレスをもらう場合には相手の特定が最も困難である。
 また、意図的に送りつける人もいる。

○それらの対策としては
 open relayについて「管理者への通知」
 ウィルスについては「外部からの連絡による対処」
 意図的なものについては「倫理委員会で。」
 10~30%がspamと推測できるが、判断は難しい。
 MLでspamが増幅
 英語、韓国語、中国語、日本語
  日本語は少なくなっている。

○現在は
 国立大学なので、各自で対策が出来ない人(弱者)は大変。

○今後は
 adminの視点では、コスト意識からあまりしたくない。
 ユーザの視点では、各自でやれば良いが、出来ない人がいる。
 また、ユーザはadminのことはどうでもいいと思っている。

 ・ツールやシステムの提供が急務
 ・特に大学は、責任問題について非常にあいまい。法的な問題が多い。
  -アメリカ:P2P放置:訴えられた。
 ・特に日本では、すぐに届いて当たり前。遅延など。
  -メールサーバが停止し、学生にメールサーバ遅延証明を書いた。
 ・メールサイズ等の業界(学部)によって異なる。
  -MAX10MBという制限にひっかかる人もいる:医学部は添付が多い。ぐろい画像。
   増やしたほうが良いかな。。。でもSPAMも考えないとな。
 ・メーリングリストに対する要求は日本が最も多い。
  日本人はMLが大好き。
  グループウエアの代わりに使っている。

■パネル発表:山井成良(岡山大学)

発信者が詐称されるとエラーメールが大量に帰ってくる。
・頻度小だが
・被害は甚大
・岡山大学と書かれたビラの配布を禁止できるのかと同じ問題。(難しい)

詐称アドレスが自組織である場合、エラーメールを大量に受信する。
事実上のDOS攻撃である。
実際にISPで発生し、被害にあっている。

エラーメールの配送には幾つかの経路がある。
・open relayなMTAから詐称fromアドレスへ返信されるもの。
・組織内中継用MTAから詐称fromアドレスへ返信されるもの。

対策としてセカンダリMTAを導入する。
前者の配送経路については、ルータでプライマリMTAへの配送をフィルタリングする。
後者の配送経路については、MXを動的に変更し、MXのキャッシュの有無を利用して
プライマリMTAとセカンダリMTAに振り分けている。

本手法の評価が困難。
実際にエラーメールを受取ってみないと評価できない。。。
・多数の組織との連携が必須。


■質疑応答

○質問者:安藤さん
安藤氏:spamメールのURLを検出してブロックする実験中。
    spamの中身も高度化/複雑化していて、その都度解決しながら作っている段階である。
    言語に関わる問題があるかないか。
北野氏:ベイジアンフィルタは有効と考えている。言語によって分かち書きの問題などが大きい。
    韓国語に関しては日本語より容易と思う。
    今後(次期)の実装に向けて開発中。
    URLから追跡するのは効果をあげている。

○質問者:JPRS 飯田さん
飯田氏:MXの切替は?
山井氏:検出したときのアップデートしている。
    プライマリを削除する方式。
飯田氏:自分のアドレスで自分にspamをもらうこともある。

○質問者:IIJ 山本さん
山本氏:spamをもらわない方法はどうしたらよいか。
    幾つかアドレスをもっている。
    いくつかのメールアドレスのうちメインのメールアドレスにはほとんど来ない。
    アーカイブを公開されるようなものにはメールアドレスを掲載しない。
    つまり、メールアドレスを曝さない。曝す時には使い捨て。
    個人用では、whois 等で公開されてしまい、spamが多い。
    web,アーカイブ、ネットニュースにつかうアドレスを使い分ける。
    アドレスをさらさないことが大事では。

    ISPの管理もしている立場として、
    ユーザが送らない/ユーザへ送らせたくない。
    でも、spamを受け取りたい人がいるかもしれない。。。
    入り口でブロックして本当に良いのか?
    end-endで判断しないといけないのか。
    スコアリングするとかを考えなきゃいけないのかな。

    ユーザの発信メールをリアルタイムに検知して、
    spamの発信を止めさせる方法はどうしたらよいか?
    自ISPのユーザがspamなのかを判断しないといけない。
    判断するのに良いアイデアはないか?
    ISPへの要望はあるか?

安藤氏:アドレスアサインをやるのが最もよいが
    それをやると、メールアドレスが知りたいという要望が多い。
    spamには個人ベースで対策するのが最も良いと考える。
    また、学生のアドレスが番号順となっているが、それをやめたい。
    番号順にspamが送られてしまうので。。。
    また、個人ごとにspamの定義が異なる。
北野氏:サーバに余力があればゲートウエイでヘッダにSPAMであるというマークを残すだけにして、
    一生懸命配送するのも良いと思う。

○質問者:北海道総合通信網 池野さん
質問者:戻りメールの被害が多い。
    プライマリDNSをたくさんもっている。
    対策が困難である。(意見のみ)

○質問者:Japanケーブルネット 山田
山田氏:一括で防げないものは個人ベースで対応している。
    CATV向けに、名簿等でくるものには個人で対策するしかないと思う。
    ウイルスものの場合でDNSが引けない場合、メールキューに溜まる。
    spam対策として「一元さん方式」というものがある。qmail-jpで提案されていた。
    ・1回目のsmtp接続ははじく。2回目は通す。
    ・正常なMTAであれば再送するという仕組みを利用。


7.まとめ

・spamは今後も増える。
・重要なメールを見落とすことが問題。
・spam対策ソフトの導入が有効。

・アドレス詐称に関してはMXを用いた対策方法もある。
・大量のspamはDDOS攻撃に同じ。
(西永)

8.所感

一日に数百、数千のメールを受取る方がいらっしゃるのに驚いた。
また、私の場合、日本人以外の友人・お客様がほとんどいないため、
英語のタイトル=spamとして瞬時に処理可能だが、
海外からのメールを公私に受取っている方にとっては、重要なメール
を見落とすという点で、あらためてspamが深刻な問題であると認識できた。
(西永)