1. プログラム名:広域イーサネット網を利用した分散IXの現状 2. 発表者:田中邦裕(SRSさくらインターネット) 3. 日時:2003年1月23日15:55‐16:30 4. 発表の焦点、論点、議題: ・IXという場においてDIXが提供するのは何か? 端的にはピアリングであるが、JPIX/NSPIXP2への到達等の即効性も提供する。 交換の場としてはJPIX/NSPIXP2だけなので、DIXとしてはJPIX/NSPIXP2への 到達性をサービスとして保証しており、トランジットは別にサービス提供している。 地域ISPは地域プロバイダ部会を通じてコミュニティを形成するので、DIXとしては 特にコミュニティを提供していない。 ・地域ISPが地域IXを使うメリットは? コストメリットという即効性があげられる。 ・分散IXサービスとしてL2を採用するメリットは? DIXはコストメリットという営業的アプローチを重視。逆に技術面のデメリットはあま りないとみている。なぜなら、DIXにつながるのはルータを想定しているのでMAC アドレス数の問題はないとみている。また、ブロードキャストについては、ARPぐら いでしか発生しておらずその頻度も低いため、他ユーザへの影響は少ないと言える。 ・イーサネットの広域化で信頼性を向上させるにはどうすればいいか? STP、RPRなどもあるが、現状ではL2のプロトコルに依存せず、L3でどうするかに 重点を置く方がよいと言える。 5.発表の流れ: ・本セッションの趣旨 1)広域イーサネットは大きなL2SWとして運用できるのか議論する。 2)流行してきた地域IXの今後の展開について議論する。 3)分散IXは成立可能か議論する。 ・分散IXの定義 分散IXとは、全国どこからでも接続できるIXサービスのこと。これらIXが繋がって いけば広域IXとなる。 分散IXとしてはL2とL3があるが、DIXは広域イーサネットによるL2構成。 ・L2のデメリット L2は運用面で難がある。このためキャリア側からサービス提供を受けるよう選択 したが、ユーザのトラフィックを把握する必要があるため、キャリア側からトラフィッ ク情報提供が必要。また、ブロードキャストが北海道から鹿児島へ行くような可能性も あるが、地域IXが浸透し、ルータを仲介して分散IXに接続されればブロードキャス トは抑制される。 ・L2のメリット L2は一般に高性能で、また、設定が面倒なルータを減らすことが可能であり、 ホップ数も減る。さらに、東京と大阪で境界ルータとピアリング可能なため、不要 な東京経由のトラフィックを抑制できる。   ・キャリアサービスの利用 自社構築が困難なため、2キャリアの広域イーサネットを採用。 ・DIXの提供機能 ISP間のピアリングを可能とし、境界ルータから先のJPIX/NSPIXPに到達可能。 全国一律の定額制料金(100M80万円/月)を採用し、別にトランジット料金を支払えば インターネットへ抜けることが出来る。また、コンテンツが利用できる等の メリットもある。 ・JPIX/NSPIXPとの関係 東京・大阪以外のISP/CATV事業者がJPIX/NSPIXPへ接続することも多い が、DIXを利用してJPIX/NSPIXPへ接続すれば、直接JPIX/NSPIXPへ接続する より低廉である。 ・地域IXとの関係 地域IXは境界ルータを介して分散IXに接続する形態により、他の地域IXとのトラ フィック交換のみならず、JPIX/NSPIXPへの到達性やコンテンツ利用が可能。 地域IX配下のISPから/24のような小さな経路情報が流れるのを容認すべきかと いった問題が存在する。 ・CATV事業者との関係 分散IXはCATV事業者の接続にあたっては、相互接続事業者局内までL2SW等 を張出す形態が可能。 ・分散IXでのトラフィック流通 CATV/地域IXはマルチホームが多く、IXからのトラフィックはトランジットISP経由 が多いので、DIX側と分散を図る必要がある。ただ、ユーザ相互のトラフィック交 換はしないので、JPIX/NSPIXPかプライベート・ピアに流れる。 ・課金方法 トラフィックがどこからどこへ流れたかL2で計測するのは難しいが、専用ソフトは 安定性・コスト等を考慮して採用を見送り、ポートミラーリングによる全IPヘッダの 解析で実施。 6.まとめ: ・広域イーサネットは大きなL2SWとみなすことができ、今後普及すると想定され るが、キャリアのサービスを利用すれば運用面で利便性が高くなる。 ・地域IXは今後、分散IXを介して地域IX間のつながりがでてくる可能性もある。 ・地域のISPにとっては、一次ISPの接続料が下がらないなら、コストメリットのあ る分散IXは良いソリューションとして成立する。 7.所感: キャリアの広域イーサネットを利用して分散IXを提供するDIXは、先端的な取組み として各事業者からの関心が高い。このため、顕在化してきた地域IXや、CATV 事業者との連携が成立するか、今後の展開が注目される。 8.記録者:清水弘之(NTTコミュニケーションズ)