【タイトル】 「パネルセッション」 ISP最前線 〜いまどきのISPって何だ!?〜 【発表者】 チェア:   浜田 泰幸 (NTTコミュニケーションズ) パネリスト: 吉田 友哉 (NTTコミュニケーションズ)        牧園 啓市 (ソフトバンクBB)        南村 達哉 (アイテック阪神)        川田 靖  (ケイ・オプティコム) 【時間】 2003年1月24日14:00〜15:05 【発表の焦点、論点、議題】 近年いわゆるISPは多様化し、全国バックボーンをもつものから CATV網を利用した地域型ISPまでその様態は様々である。 今回は「老舗ISP」OCN、「いまどきISP」SoftbankBB、「地域密 着CATV」アイテック阪神、「同じく地域密着FTTH」ケイ・オプティ コムをお招きし最新のISPネットワーク設計についてノウハウを共 有する。 【それぞれの発表】 (NTTコミュニケーションズ 吉田) 過去から現状: 96年12月 OCNは完全二重化ではじめた、ロードバランスもしてました。 STATICをOSPFではなくBGPへ NO EXPORT +アルファ BGP RR(リフレクター)の階層化、経路配布は必要なルータに必要なだけ行なう設計 になっているが、CONFEDEはノウハウがなくて諦めました。 昔は数ギガバックボーンで、今は数ジュウギガで、かつ分散、東阪が断でも 地方NOCも孤立させないような設計になっている。 OSPFでは1つのAREA内の台数を制限している。 中のBGPは経路増えず、外のBGPだけが増えているが、今はスケールしている。 レイヤ分け(L2,L3)は行なえている。 未来: 広帯域化に対応する必要がある。 IX分散を考える必要がある。 品質向上の為にはSONETレベルで警報、即時迂回するネットワークの 完全冗長化、すばやい反応が行なえるようにする事が大切。 (ソフトバンクBB 牧園) 目指した事: イーサーネットベース大容量ネットワーク シンプルなリングデザイン ダークファイバのピュアIPネットワーク VOIPに最適なネットワーク MULTICASTに最適なネットワーク 現状から考察: 大量のL3SWを必要とした為、数社のベンダさんを呼んで、あるところから1500台購入。 ダークファイバありきのはずだが、準備が整わない時に設計する必要があったので、 ダークファイバなしでひとつのエリアの中でスケールさせるのが難しかった。 VOIPのQOS、MULTICAST、に関しては混乱することが多かった。 バックボーンのデザインは、頑張って役割分担を考え作ってきたが、ISIS等の使用は 時間がなくて、考えられなかった。 しかっりしたレイヤ分け(L2,L3)は行なえた。 全国7箇所のPOIから風船が全国にぶらさがってるネットワークデザインを行なった。 BGPはRR(リフレクター)を多段構成でスケールさせることにした。 トラフィックは月に3Gずつ伸びてる PRIVATE PEERの大切さを認識した WIN MX Trafficが大変、対処をいろいろ考えてます 32pathバランシングとか、メーカさんの開発に期待している。 VoIPのTrafficが見えなかったけど、PEAKはTVのCMの間だけで、普通の電話と同じ ように使ってもらっているようだ。 Multicastの同時アクセス数が問題として認識しており、対処を考えている。 (アイテック阪神 南村) 現状: CATVの規格はツリー状でシェアードメディア方式 BBは局間含めて全てETHERベースで構築 GbEの次をどうするか悩み(今はダークファイバ) 対外接続もETHERで行なっている。 OSPFとBGPを使用、 Prefixで制御を行なっている。 IN 500M、OUT250MがTRAFFICのPEAK WIN MXが上りのTrafficの大半をしめているようで困っている。 CATVは雑音との戦いが大変です。 雑音が原因の障害検出とかは人海戦術で泥臭くやってます。 CMTS(センタールータ)あたりの集積率を下げたいと考えています。 速度競争やってるのは日本だけらしいですけど、避けるに避けられない スパイラルにはまっています。 マルチキャスト配信もやっています。(ウタダヒカルのライブも配信しました。) VoIPも始めました。 Class5のSWを自社で所持しており、運用している。 CATVの連携VoIPを軸に関西18社で現在協力を深めています。 局間を接続するネットワークを構築しておりますが、 これはある意味地域IXなのかもしれません。 (ケイオプティコム 川田) 現状: アステル前身でもともとPHS網を持っています。 FTTH全体では尻上がりに増加傾向となっており、月毎に数万人ずつ増えていますが、 まだまだ一般化してないと感じています。 吐くTRAFFICのほうがだんぜん多く、非常に驚いています。現状は3Gで、今や立派なコンテンツプロバイダとなりました。(笑) ネットワークは3階層のリング構成、OC48で二重化、ルータ+ファイバで構成(YahooBBと同じ?) MPLSで転送、外部とは3Gのトランジット+2GのIXで繋がっています。 未来: OC192以降は大丈夫かなと、今後のTRAFFICの増加と対応するメディアに不安を感じている。 ファイバーベースだからトポロジの変更が難しい。 上流が我々のコントロールに耐えられなくなってきている現状があり、大変苦慮している。 1Gではpeer数が限界であり、今ではパブリックとプライベートのPEERはイコールに近い。 10Gはまだ高いので、対費用効果を考えると選択が難しい。 プライベートpeerは交渉ごとでなかなか進みにくい。 【論】 1.WinMXについて プレゼンテーションの部ではWinMXと思われる大容量トラフィック について言及があった。実際にISP側でポートを閉じる、絞るなど の対応はとっているのか。 ・ポート番号が可変となったため、ポートを閉じることは難しい。  WinMXとは関係のない正規のサービスに支障をきたす恐れがある。  (吉田) ・6699などというわかりやすいポート番号を使わないようにして  くれれば気づかないふりができるのでむしろ助かる(笑)  (牧園) ・止めているISPもいるとは聞いている。  (南村) ・転送容量を測定してみたらテラバイトクラスの方も存在し驚いた。  (川田) 会場からの発言 ・ISPにとってトラフィックは飯のタネである。  (ODNではどうしている?との問いにはノーコメント) ・トラフィックが増えていること自体はいわゆる「ブロードバンド」  の浸透としてポジティブにとらえることができる。増えたトラ  フィックにどう対応するかがより本質的な議論だろう。 ・WinMXを切った結果掲示板で晒されることなどを考えると、なかなか  切るに切れない。他社がどのような対応をとっているのか興味がある。 ・ある日「お宅のサイトにうちのソフトの名前が出ている」と指摘さ  れた。それ以来止めている。 2.peer、トラフィックの処理について peerについて、より一般的にトラフィックの処理について、どのような 対応・工夫をしているか。 ・OCNは上流が1社だけなので、いまはそれほど複雑のものでは  ないだろう。上流が複数あるISPのほうが苦労しているのではないか。  (吉田) ・上流は複数あるがバランシングが難しい。トラフィックを振ったら、  途端に振った先から悲鳴があがった。ちなみにそのときはprivate  peerを申し込まれた。わざとやったわけじゃないです。(笑)  (牧園) ・最終的にprivate peerでやるしかないのではないかと思う。  (川田) ・最近ではくだりよりものぼりトラフィックが問題になるが、受け取る  経路を絞って流す方向を制御している。  (南村:会場からの質問に答えて) 会場からの発言 ・IXでprivate peerやるにしてもインタフェースの速度が伸びるトラ  フィックに追いついていない。トラフィックの伸びについてはユー  ザー数の伸びよりむしろマシン数の伸びではないかと考えている。  いずれにせよトラフィックの伸びはとどまる気配が見えないし、  どこかでフラットレートでカネをとるビジネスモデルを変える必要  があるのではないか。 ・フラットレートの料金でこれだけ爆発するTRAFFICに対応していく事で ビジネスはこのまま成り立つのでしょうか? 確かにその通りで、現状のままでビジネスが成り立つのは後1年と考え ています。 ・この量のトラフィックをBGPでさばくのがそもそも乱暴すぎる話で  ある。たくさんある出口に対してうまくエッジ側でばらけさせるのが  正しい方向ではないか。  (←「MPLSってことですか?」(笑))→MPLSにしたところで、TRAFFIC のバランスが難しい問題として残る。 ・今の日本の「ブロードバンド」は国内に閉じるトラフィックがほとん  どである。この特性を考えたとき、フレッツ網のような地域アクセスを  ななめで束ねるNWと、それに乗らないトラフィックをさばくNWの二つに  わけてやる以外に現実的な方法はないのではないか。 ・実際、国際TRAFFICの増加はみられるのでしょうか? 確かに国際のTRAFFICは国内TRAFFICの増加と比べれば話にならないレベル ではある。 ・コリアテレコムはユーザー数200万でsaturateした。単純に計算すると  日本では1000万あたりでsaturateするのではないか。  トラフィック量はどこかでsaturateする。そのときどうお金を取るのか、  どこまでフラットレートでいくのか、真剣に考えるべきである。 【まとめ】 本当は設計の話とかやるつもりだったんだが、話が色々な方向に拡散 してしまってまとまりがつかなかった。とりあえず、がんばろう。 (浜田) 【所感】 まとめにもあるが、純粋にトラフィックをさばく技術の話と、それに 乗っかってお金を取る話に話が拡散してしまった感がある。興味深い 話は聞けたが、もう少し話の方向を絞ってもよかったのではないか。 【記録者】 川上 洋平(NTTコミュニケーションズ) 佐藤 康智(JENS) 以上