1.タイトル 「JPRS update」 2.発表者 森下泰宏 (JPRS) yasuhiro@jprs.co.jp 3.時間 2003年1月24日 10:15〜10:35 4.発表の焦点、論点、議題 以下の2点についての現状報告、一般へのリクエストが行われた。 ・地方公共団体向けドメイン「LG.JP」 ・国際化(日本語)ドメイン名 発表の後に質疑応答があった。 5.発表の流れ 5.1. LG.JP について LG.JP は2002年10月1より登録が開始された、9つめの属性 JP ドメイン名で ある。地方公共団体向けに新しく用意したものだ。登録取次ぎ業務は、財団法 人地方自治情報センター(LASDEC:ラスデック)が一括して行っている。JPRSは レジストリ業務のみを行っている。 LG.JP 運用にあたり、ネームサーバ情報の登録仕様を一部変更した。すなわ ちこれまでのJPドメインと異なり、ネームサーバ情報のホスト情報を、ドメイ ン情報に対する属性情報とした。これにより、LG.JP では「ホスト情報」とい う概念が存在しなくなっている。 そもそもホスト情報の役割は、ネームサーバの IP アドレスをレジストリに 登録し、DNS の NS レコードに付随する「グルーAレコード」を生成するため に必要なものだ。つまりそのドメイン空間の一部であるホストに関しては必須 のものだが、外部のドメインに関しては不要である。これをきちんと理解する にはDNSに関する正しい知識が必要で、このためホスト情報は「よくわからな いもの」とみなされることが多い。 レジストリとしては、ホスト情報の管理は面倒なので本当は辞めたいという 側面もある。これはつまり、あるネームサーバのホスト名が変更された場合に、 どこからも参照されない、つまり不要なホスト情報が残ってしまうことがある。 これを修正するためには定期的なガベージコレクションが必要だが、どこから も参照されないからといって、近いうちに参照されるようになる可能性もある ので、即座に DB から消去することはできない。このようにホスト情報の存在 はレジストリシステムを複雑にする要因となっている。 そこで LG.JP に関しては、ホスト情報で指定していたネームサーバの IP アドレスを、ドメイン情報に統合することにした。これによりグルーAレコー ドのIPアドレスは、必要な場合のみ生成されるようになる。 もちろんこの方式の利点は、他の JP ドメインにも有効だと考えられる。他 の JP ドメインに適用することは技術的には可能だが、従来の仕様を変更する ことになるので、各方面への影響は避けられない。そのため即座に移行すると いうことは現時点では考えていない。 5.2. 国際化(日本語)ドメイン名 国際化ドメインに必要な技術仕様は、現在 RFC 発行待ちというステータス にある。ASCII に変換するエンコーディング方式は Punycode (ピュニコード) に決定した。これは現在 JP/COM/NET/ORG で先行して使用されている RACE 方 式とは異なるので、標準仕様が確定した後に Punycode への移行が必要となる。 JP ドメインの移行のシナリオとしては、RACE と Punycode の両方を扱える 併用期間を設ける予定である。つまりこの期間中は、JP DNS サーバで、一つ の日本語ドメインにつき2つの NS レコードが設定される。これで RACE でも Punycode でも正しく名前解決ができる。 RACE と Punycode の併用期間は、RFC 発行後できるだけ速やかに開始した い。Punycode が十分に普及したと判断されるまでは併用期間を継続し、併用 期間の終了と共に RACE での NS レコードを削除する。 JPRS からのお願いとしては、関係する DNS サーバ、各種アプリケーション サーバの設定の更新をお願いしたい。 5.3. 質疑応答 橘@司会 Q: 併用期間中は、見かけ上日本語ドメインの数が倍になるのか? A: RACE, Punycode 両方のドメインで引けるようになるので、そうなる。 Q: 併用期間は具体的にはどのくらいを想定しているか? A: 1〜数ヶ月程度と考えている。 Q: (日本語ドメイン名は)まだ普及していないので、移行も簡単ですよね。(笑) A: 質問はお手柔らかに。(笑) 高田@MEX Q: 移行期間中にドメインを取得した人は、両方の設定をしなければならない のか? A: そうなる。 Q: 併用期間が終了するまでは JPRS の DNS からは削除しない? A: その通り。 Q: (JPRS の DNS に登録するエンコーディングに関して)ユーザに選択の自由 はあるのか? A(宇井@JPRS): ユーザ側が RACE を必要としていなければ、ユーザ側の設定 を削除してくれればいい。ユーザ側の運用に任せたいと思っている。 近藤@会長 Q: アプリケーションが対応していないという状況は、あまり変わらないよう だが。 A(宇井@JPRS): Internet Explorer, Opera をメインと考えている。MS は RFC が出たらすぐやるというコメントをもらっている。 橘@司会 コメント: 次回の JANOG で、移行時のトラブルをまとめて総括すると良いん じゃないかと思う。 6.まとめ 新たな属性ドメイン LG.JP においては、DB 内のホスト情報の持ち方をこれ までから変更を加えた形でスタートした。既存の JP ドメインもこの形に移行 したいが、様々なシステムと連携して動いてるのですぐにはできないだろう。 国際化ドメイン名は、仕様がまもなく確定しいよいよ実用に入る。皆さんに は各種サーバの設定変更等をお願いしたい。 7.所感 国際化ドメイン名に関しては、主にマーケティングサイドからの要求の方が 強く、今回の JANOG 参加者にとってはあまりそそるテーマではなかったよう だ。技術的には難しい部分はほとんどなく、個々のアプリケーションの対応が すべてを握るという点では、 アプリケーションが対応しない -> ユーザも使わない -> 最初に戻る という後ろ向きのスパイラルをいかに脱するかというのが重要なのだろう。そ こまでの労力を払ってまで、いったい日本語ドメインを誰が使うのか、ターゲッ トとなるユーザ層が不明確なままなのが一番問題なのではないかと感じた。 8.記録者 小山 哲志