1.タイトル 広がるP2Pサービスとインターネットインフラへの影響 2. 発表者 株式会社ネットアーク 松本直人様 P2P today ダブルスラッシュ 横田真俊様 NTTサービスインテグレーション基盤研究所 亀井聡様 株式会社ネットワークバリューコンポネンツ 田山信行様 NEC 中原一彦様 3. 時間 2004年 1月30日 17:10〜17:55 発表 17:10〜17:35 質疑応答 17:35〜17:55 4. 発表の議題 現状、様々なP2P技術は出ているが、P2P=ファイル交換ソフトというネガティブ な認識が一般的になってしまっている。 P2P技術が持つ現状の問題そして今後の可能性、P2Pトラフィックに関るISPの立場 からの認識、P2Pトラフィック制御装置の販売・インテグレーションに関るパネラー の皆様と会場にいるオペレーターの皆様と色々と議論し、よりよいインターネット インフラとP2P技術の今後についてを考えていきたい。 5. 発表の流れ ○現状のP2P接続例 接続構成図: なかなかどのような接続になっているか画では見れないと思うがこんな感じ 実際のP2P技術でどこが問題点かというのもこれから話せればと思う ------------------------------------------------------------------------------ ○プレゼンテーション:横田様 ------------------------------------------------------------------------------ 現状ならびに今後のP2P技術の可能性について述べたい。P2P技術に対してネガティブな イメージを一般的に持っているかと思うが、そうではない違う側面を見て頂ければと思う。 ・P2P技術に対する誤解 P2P技術というとWinMXやWinny等ファイル交換ソフトを思い浮かべがち ファイル交換ソフトはあくまでもP2PGWを使っているだけ P2P=悪者ではない。 ・何故P2P技術を利用するのか? 1)特定のサービスを安く提供 2)急速なサービスの成長にもたえられる ○P2P技術を利用したもの ・SETI@HOME(分散宇宙探しプロジェクト)  50万ドル位で済んだ  スパコンは1億ドル以上 ・Napster  ユーザが急速に増えても配信元の負荷が上がらない。 ・ファイル交換を除くP2P技術なサービス・プレイヤー 色々在るがワイヤレスP2P・コンテンツ配信に絞って話をする。 ○コンテンツ配信型P2P 今後ますます個人レベルでのコンテンツ配信(ラジオ放送等)をしていくと 思うが現状のストリーミング方式では無理。 ラジオ運営している人に6−7人でNWが飛んでしまうという話を聞いている。 ○ワイヤレスP2P 最近、無線LAN内蔵PDA、PCが増えている 災害時にサーバが死んでしまった場合でもリレー方式で情報を伝達する事が できる地域に密着した情報配信について考えている方も多いと思うが、 ワイヤレスP2Pでこのような情報を共有できる可能性も今後考えられる。 ・まとめ モザイクの再来か? テキストベースの世界から画像情報の世界へとWebトラフィックが爆発 今、ブラウザ使用しない人間は少ないはず。 Winny等違法なファイル交換が多い現状は仕方が無いが、それに甘んぜず 個人が音声や動画配信など情報を配信していくためにはP2P技術が必要という 認識を深めて行くべきである。 ------------------------------------------------------------------------------ ○プレゼンテーション:亀井様 ------------------------------------------------------------------------------ P2Pトラフィックとサービスの現状 ネットワークインフラにP2Pがどれだけ影響を与えているのか ・P2Pとは? IRTF定義:個々のノードが対称的な役割を持つアプリケーションを構築 P2Pはファイル共有だけでもなく、全てが違法というわけでもない。 スケーラビリティに富んだ優れた技術だと技術屋さんには理解されていると思う 現状としてはネットワークを効率良く食いつぶす技術になってしまっているが。 オペレーターにはP2Pによるトラフィック増加が問題。 ・IXでのトラヒック Winnyユーザ逮捕後、トラフィックは2割落ち込んだ Winnyユーザの何割か=JPNAPにおけるトラフィックの2割 しかし、時間が経つにつれてトラフィックは復活しつつある恐ろしい状況 ・WIDEの国際線トラヒック(学術系) Gnutella,KaZaa,WinMX,Winny 日本とロサンゼルス間のdump dataをWIDEが公開 ポート番号ごとにアプリ種別 下流NWはWIDE系の学術機関がぶら下がっている ここ1年半位は増加が抑えられている 日本レコード協会が警告状を大学に送った結果が反映されている? ・エッジ側のトラフィック なかなかオープンな情報がないが… ある閉域網とISP間トラヒックのアプリケーション比率を出したグラフ 対外接続線のトラヒック占有率遷移を見ることができる Winny+WinMX>web x 2 以上? ・P2Pの論理ネットワークでなにが起こっているか Slyckというサイト FastTrack(KaZaA)が圧倒的だが、新興の eDonkey:アジア系に強い、も 伸びている。 RIAAが訴訟してのインパクトが出ていない。 おそらく測定自体が難しいというので全体の数が取れていないのではないか ->実際にはもっと多い? ・NTT研独自調査で入手したデータ ○Winny2のノード情報を収集 グラフの青いところが通信したユニークなIPアドレス それに対して1時間おきにパケットを飛ばしてサービスが生きているか、 死んでいるかを追いかけた マシンは8並列 逮捕者が出た後の測定となっている ->それでもWinnyユーザで7−8万ノード程度という状況 グラフ上のSYN-ACK:投げたパケットに対して生存パケットを返したもの 全体のなかで1-2割が多少人間らしい24時間変動の生活をしている ノードであると ->1-2割以外は変動がない->常時稼動か? トータルを表したグラフ:逮捕前には線が寝るようではなかったが… 逮捕後は寝るようになってきた ・ファイルサイズとコンテンツ比率 ・制御/規制 某プロバイダが2003年10月あたりからP2Pトラフィック規制している その他ISPも幾つか追従 技術的にはシグネチャ方式等ヒューリスティックなやり方があるが 誤認識やスケーラビリティの問題も。 Winnyの後継アプリケーションとなるものも出てきているし、 トンネルの中に流されたら規制しようがない? ->SoftEtherとか ・提言あるいはお願い 公開データをちゃんとはかって、ちゃんとだそう! 複数の大手ISPが集まって出すのもよし、キチンと測定をしてデータを出して 世論形成をしていこう データとあわせて出すことによってこれは勘弁して欲しい、これなら規制も 仕方ないでしょといえるようになることも考えられる 午前中のセッション"To filter / not to filter"での話じゃないが、 ある程度大きなところでやっていくべきかと思っている 制御については、緊急避難的な制御か恒常的制御なのか 中長期は設計、短期は制御で逃げる 短期でリアルタイムさえ守れば、他はいいじゃないかという考え方もある ------------------------------------------------------------------------------ ○プレゼンテーション:田山様 ------------------------------------------------------------------------------ トラフィックコントロール手法について ・P2Pそのもののかたち ○おさらい 実際にはP2Pが始まった当初はそれぞれのノード同士が通信 固定PORT番号もつかって 過去は固定PortでFW等でフィルタをかけていた ○フィルタされるならポート番号を変えてしまおうという動き ポート番号に依存しない通信を考え始めたユーザが出てくる ->統計的にフィルタしてしまおうとかしたら ->絶対とめられないポートでやってしまおうとか  80番とか25番とか絶対とめられないというポートでやろうというユーザも ポートフィルタするよりもデータ部分を暗号化してしまえ 勿論RouterでもFWでも制御できませんというところになってしまった ・P2Pトラフィックの特徴 特定のデータパターンを持つ 特定の文字列が含まれている(HEX) はじめに何byte、続いて何byteとかいうような 実際のトラフィックの中身を見なくても特定のパターンが出ている ・検知方法 ->大きく分けて3つ 1)Signature Pattern Matching ペイロードを見てパターンファイルと照合 ->暗号化されるとキツイ 2)Traffic Pattern Matching バイト数とかの特徴を見る 暗号化された通信(Winny等)に対処する方法 3)もうひとつ新しい概念:Proving クライアントに対してあなたはこれをつかっていますか?と確認する P2P要求を掛ける ・制御装置 ・L7SW HWベンダがL7SWを出している インラインでsignature,traffic patternをチェック ->Rate-Limit,Shapingを使っての帯域制御 1G wireレートが現状では限界。もうそろそろ10Gも(2004年以降) ・IDS インラインではなくアウトラインにいれようという概念 Provingが追加されている インラインに入っていないのでClientのCPU処理限界として1Gが一般的 Router-Routerの間にタップをいれてそこでトラヒック バックドアよりTCPRST L7SWだと細かい制御ができる IDSの場合は個々には難しい 回線として全体制御できるというかたち ・まとめ このような手法で各ISPさんとかでユーザに対して公平なサービスを提供する、 という思惑で役に立っていくのではないか ------------------------------------------------------------------------------ ○プレゼンテーション:中原様 ------------------------------------------------------------------------------ 「公平なサービスへの課題」 ・インターネットの利用の変化を認識しよう ○2年前まではClientServer型 1年前(あるいはもっと前?)を境にP2Pという形態:Client-Clientが意外と 多いということを認識した P2Pに対して色々な課金とかできればビジネスの広がりになるということで 制御や制限を考える前にビジネスを考えている ○現状利用アプリの比率変化 IP電話、VOIP、Winny等 多様なサービスを一本の回線にのせてしてため      トラフィックの問題でいうと、Winnyトラフィックが大きい インターネットが社会インフラ化してきた。 ->公平性でてくる ブロードバンド回線 ->一人あたり格段に全然違う通信料が個人レベルで出てきている ↓ 一本の回線での多様なサービスの共存を考えなければならない ・P2Pに優しいトポロジになっているかどうか ○考えやすい一つの例としては: ISP間をまたぐ通信は、普通は相互接続点でトラヒック交換が おこなわれる。 ○色々なリソースを食いつぶしながらいくのであれば、 P2P専用の最適な通信経路を作ればいいのでは? (P2Pが地域に根ざしたものとなれば) P2Pが地域に根ざしたものかどうかは現時点では微妙 テレクラで通信相手を探しているようなもの 地域に閉じた通信が多いわけではなさそうだ。 遅延を測定しながらアドレスの近いところをひっぱってくるとか 想像してきたが現時点では地域に閉じてなくてテレクラのように たまたま会った人と通信しているようなイメージ 今後も最適なトポロジ研究していきたい ・10G化 一方トラヒック対策としては、10GbE化をすすめている。 ここ半年の延び 対外トラヒック・アクセス向けトラヒック 1年前はこういう延びじゃなかったのに待ったなしの現状 常時接続という環境変化が大きいのではと推測している。 ○Policyは均一サービス提供 Webとか確保するコントロールも必要になってくるので、 混雑時にのみ輻輳対策をするとすれば、契約者単位のコントロールが 良いかアプリケーション単位のコントロールが良いか公平なのは どれだろう。 End-End:ISP同士が色々考えて通信をコントロールしていかないと 今後美味い具合にいかない ------------------------------------------------------------------------------- ○パネルディスカッション ------------------------------------------------------------------------------- ○争点になっている部分:快適な通信インフラの維持  ユーザ内容に関する話:コンテンツの中身が違法か違法じゃないか ->輻輳のあるNWに対してどのような対応ができるかについて議論 ※著作権・電気通信事業法・プロバイダ責任法については今回は議論しない ○ネットワーク設計モデル崩壊/快適な通信サービス維持 ネットワーク輻輳制御? 再構築?それとも? ベストエフォートではありながらも 中原様よりご提案もあるが再構築もあり 一時的な話ではあるが輻輳制限(短期的?) ○亀井様 ->P2Pが出てきて何が一番変わったか Webなんて大体ツリー構造だから大体トラヒックは想像つく でもP2Pは? C/S なら輻輳が起きたとしてもNWの設備増強が追いついていないだけ だから一時的に絞ってその間に増設すればOK ->全部設備うつのが正しいの? P2P では構造がツリーになっていないので全体でみると別のところが 輻輳するかも? で難しい ->それじゃあ、どうすればいいか 増設や設計方針にあらたな方法論を作っていくべきかと思っている ○田山様 実際にアクセスエッジのポイントにおいて輻輳が起こったという状態 ->エッジにぶらさがっているUserにはメール送れないとかリアルタイム アプリケーションにとぎれとか生じる それ自体のトラヒックの中身をみてみると少数のP2Pユーザのせいであったら それは公平に制御させていただくと考える NW自体が輻輳しなければ当然つかえばいい=混んでれば皆で仲良く使えばいい ○横田様 ユーザ視点からはなかなか帯域は見えにくい コンテンツを配信する側としてはプロバイダにルールをはっきりして欲しい ○中原様 公平なサービスを遣る上で品質の違うトラヒックを1本の回線に通す インターネットで今問題になっている高負荷なアプリがある というところで皆に優しいNWを作っていければと思っている 【質疑応答】 ・MEX 高田様 コメント: 詰まっていて遅いNWから人がどんどんいなくなってすいているNWに 人がうつっていくというのが現状でおこっている 2ちゃんねるにも良くのっている 自分もつまっているプロバイダはすぐかえる そんな人達の人民大移動が起こっている それに勝ち残るにはとにかく太くするしかないんじゃない?絞るとかじゃ無理。 機器でも無理げ。 コストの問題もあるけど無制限に太くしていくしか今はないような気がします。 ・セガ アガタ様 午前中にISPにけんかうってしまったが… Q1)遅延が発生する点 ->ネットワークゲームにどれだけ影響するのか? Q2)それを誤認識することは? プロトコル自体から作ってしまうのでそれ自体にひっかかってしまうのでは? ゲーム会社の本音は真中に変なもの入れて欲しくないと思う ・田山様 A1)遅延について ->L7SW:マイクロセック単位・MS単位 パケットByパケットだからショートパケットという 多く舐めるのか少なく舐めるのか おいつかなくなった場合、全部スルーしてしまう 一概にはいえない A2)誤認知について 勿論ある 100%ということは勿論ない それを実現化するのが日々行っている業務 ・セガ 意味がないと思うんですけど… もしそれでひっかからないように作れるとすればそういう人はでてくるのでは? ウィルスのようにP2Pもどんどん違うSignitureが出てきているから 絶対安心のものが欲しい ISPもベンダも誰も保証してくれない EndUsrから文句を言われるのはゲーム会社ということで非常に辛い ->もしそれをISP側でかけるのであれば、ベンダもISPもどういうものを かけるのかを公表をきちんとしていただきたい こういうのであるとひっかかるという情報がなければゲーム会社では 対策の仕様が無い ISPさんの中で何が起こっているのかとか見えるようでなければ無理 ・OCN 水越様 アプリケーション毎の制御はむずかしい アプリケーションが変わったら対応できない ユーザひとりのトラヒックレートで対応するのが現実的 ひとりあたりの帯域制御に関していえばOCNは既にやったことがあるので OCNエコノミー)余り新しい問題ではないと思っているんですけど。 ・KDDI たはらさま 最後に会場にいるNTT東と西にお願い ISPに100Mのサービスを100Mで渡すのはやめてください〜 (会場爆笑) ------------------------------------------------------------------------------- ○本セッションのまとめ(松本様) ------------------------------------------------------------------------------- ユーザの視点にたった適正な短期的・長期的な視野で今後も議論していきたいと思う ------------------------------------------------------------------------------- 6. 所感 P2P技術=ファイル交換ソフトではなく、個人のクリエイティブな情報発信技術 として、あるいは地域密着型情報技術として社会に貢献していく技術であること がメジャーになるような世の中になるにはどうしたらいいのかを考えながら興味 深く拝聴していました。 インターネットインフラの公平性についてはこのような場で(このような場だから こそ)今後も熱く議論されるべき内容だと感じた。 (logger担当:NTTCom 金井)