インターネット接続機器間の時刻同期技術の現状と将来
(JANOG TimeSync WG 中間報告 for JANOG4 meeting)
Kenji Rikitake / 力武 健次
<kenji@rcac.tdi.co.jp>
3-JUL-1999
(HTML version: 12-JUL-1999)
時間の標準
- 日本の生活時間
JST (日本標準時)
- 国際的な生活時間
UTC (協定世界時)
JST = UTC + 9時間
- 原子時計による時刻標準
TAI (国際原子時)
- 地球の自転は遅くなっている
うるう秒でTAIとUTCの差を調整
TAI - UTC = 32秒 (1999年1月1日現在)
コンピュータの時刻標準
- TAI/UTC/JSTどれかへの同期が必須
理想はTAI同期+ソフトの補正
現実にはUTC/JSTへの同期
(この場合うるう秒調整の不連続性が問題になる)
- すべての機器が同期することが必要
- タイムスタンプの正当性の保証
- 分散したログの整合性の維持
- 分散協調動作の前後関係の保証
要求される同期の種類と精度
- 同期調整のルール
時刻は連続し常に単調増加
- 時刻と周波数双方で同期を取る
- 絶対時刻標準: 時計の針の位置
- 周波数標準: 時計の進み具合
- せめて秒単位までは合わせて欲しい
現実には分単位のズレ
(例: 電子メールのタイムスタンプ)
- 将来はミリ秒単位での同期が必要か
時刻と周波数標準の取得
- GPS衛星
時刻標準のみ
時々見えなくなる
- JJY (40kHz, 旧JG2AS)
時刻と周波数標準双方
ほぼ全国をカバー
- その他
- テレビの色同期信号(3.579545MHz)
- NHKの時報(時刻標準のみ)
- JJYの短波標準電波(2001年には廃止)
- ISDNの網同期信号(NTTで実験中)
- FM文字放送時刻情報(±18ms)
機器間の時刻合わせプロトコル
- NTP
RFC2030
ネットワーク間遅延を考慮
- TIME/DAYTIMEプロトコル
RFC867, RFC868
瞬間時刻だけの同期
- timed
BSD UNIX間のmaster-slave同期
- TAICLOCK
DJ Bernstein氏が制作
ツールclockspeedで利用可
TAIベースのUDPによる同期
NTPの抱える問題
- 広域ネットワークでは秒単位の同期は無理
公開サーバが少ない
RTTの変動する回線では精度が悪くなる
- 負荷集中による精度の悪化
定量的測定はできていない
- 運用上の問題
peerとclientの運用ミス
不正なpeerによる攻撃の可能性
broadcastclientがうまく動かない
- 一次時刻標準の取得がコスト的に難しい
NTPの諸問題の解決案
- 各プロバイダでのNTPサービスの実現
各NOCレベルでstratum 1が欲しい
できるだけRTTの小さい場所に
anycast的経路制御の応用
- 統制の取れた必要最小限のpeering
認証機能を活用しよう
同じstratum同士以外では無意味
標準取得にはclient接続で十分
- 他プロトコルとの併用
外部とだけNTPでやる
中はtimedなりTAICLOCKで十分
その他時刻同期の諸問題の解決案
- 安価な時刻標準取得方法の開発
GPSも40kHz受信機も安くなっている
40kHzには専用ICあり
FreeBSDはカーネルで対応できる
ホストのクロックもTCXO化でより安定
NHKの時報でもないよりはいい?
- クライアント機器の時計もきちんと合わせよう
UNIXならntpdate
Windows, MacOSにも同等のものあり
ルータはせめてrdateだけでも…
さし迫っている問題
- 1999年夏にGPSのカウンタリセット
1024週のカウンタが0に戻る
未対応機器は即修正要
- 2000年問題
JANOG Y2K WGとの協調が必要?
- サマータイム
個人的には技術的理由で大反対
(JSTが内部時計の機器は総崩れ)
オペレータ集団としての意見は?
プロバイダへの希望
- プロバイダ内の全機器を相互時刻同期させる
一次時刻標準を持つ
(持てなければ他から借りてくる)
- 常時接続ユーザは3次標準になれる
プロバイダで2次標準サーバを複数用意
- ネームサーバなみにメンテナンスはしてほしい
- ダイアルアップユーザも同期できる
(2次標準のサーバを使える)
- NTPサーバへのRTTはできるだけ小さく
オペレータ/ユーザへの希望
- 自組織内の全機器を相互時刻同期させる
(自組織内でも時刻同期ツリーを作る)
- 一次時刻標準を持つ努力をする
- 持てなければ近くのNTPサーバを参照しよう
Stratumの絶対値はあてにならない
Stratum 1を求めてさまよってはいけない
RTTが小さい方が大事
今後のWGの活動
- 2000年3月末を区切りとする
- 活動目標: JANOG Commentの発行
- メーリングリストで意見集約
timesync-wg@janog.gr.jp
- NTP関係の基盤作り
プロバイダ各位の協力求む
- 2000年の前後の状況の記録
- その他ノウハウの集積
[end of memorandum]
本文書はJANOG (Japan Network Operators' Group) 第4回ミーティングの草稿として
提出したものを加筆修正したものです。
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