JANOG22トップ

  プログラムblog: オーバーレイルーティングとネットワークただ乗り問題

  

今回発表頂く大阪大学サイバーメディアセンターの長谷川さんにプログラムについて事前インタビューを行いました。



   今回のセッションは、長谷川さんの研究の成果を元にしたものだとお聞きしましたが、この研究を始めたきっかけを教えてください。

-もともと、アプリケーションによるオーバレイではなく、第4層プロトコルで あるTCPのセッションでオーバレイネットワークを構築するTCPオーバレイネッ トワークに関する研究を行っており、その中でレイヤ4ノード(TCPセッション を中継するノード)がトラヒックルーティングを行い、スループット向上やネッ トワーク資源利用の効率化を図るような手法を検討していました。その時の議 論で、このようなオーバレイネットワークの登場により、従来プロバイダが制 御しているルーティングをオーバレイネットワークが乗っ取ることになるため、 それによる影響があるのでは、と思いました。

その流れで、今回のネットワークただ乗りに関する研究が始まったんですね。では、その研究結果をJanogで発表しようと思ったきっかけを教えてください。

-プロバイダ間接続のしくみやコスト構造、またBGPによるルーティングなどを 見ると、オーバレイネットワークによるトラヒックルーティングが、プロバイ ダのコスト構造に影響を与えるであろう、ということは、理論的には正しいで あろうと考えていました。

難しい数式の内容はさておき、プロバイダのコスト構造に影響を与える論理は是非Janog22@品川で聞いてみたいです。

-ただ、大学で研究している範囲では、全てか机上の空論に陥る可能性があり、 本研究はとくにその要素が強いと感じていました。そのため、研究内容により 強い説得力を持たせるためには、実際のネットワークを運用している オペレータの方々の意見を拝聴し、研究の方向性や得られた結果の見せ方につ いてコメントをいただくことが有意義ではないかと考えました。

なるほど、では研究結果を現場に照会してみたいということですね。
では当日の発表の流れの概要を教えて頂けますか?

-発表の前半では、オーバレイネットワークのトラヒックルーティングの効果に ついて報告します。特に、これまでほとんど考えられていない、帯域情報を用 いたルーティングを行った場合の結果をお見せすることで、今後そのような高 度な技術に基づくオーバレイネットワークの登場で、想定していないようなト ラヒックが発生し得ることをお伝えしたいです。

また後半では、ネットワークただ乗り問題を提起し、その影響について定量的 な評価を行った結果をお見せいたします。ここでは、オーバレイネットワーク が自身の利己的な目的に沿ってトラヒックルーティングを行うと、そのほとん どがただ乗りを発生させ得る、ということをお伝えしたいと考えています。

定量的な評価結果が非常に気になる所ですが、具体的な内容は品川で、ということですね。ではこのセッションでここが議論してみたい、ポイントがあれば教えてください。

-本発表で提起している問題がネットワークオペレータにとって本当に問題にな るのかについてお聞きしたいと考えております。また、オーバレイネットワー クによるトラヒックルーティングに、プロバイダが積極的に関与することの是 非についても議論したいと考えております。

Janog22の議論で長谷川さんの研究がより実用的なものになる事を期待しています。本日はありがとうございました。

day2-3-0701-1.jpg