JApan Network Operators' Group

JANOG34 Meeting

【注目プログラム紹介】
Fullrouteやめたら人生変わった

7月中旬の開催に向けて、「JANOG34ミーティング」の注目プログラムをご紹介します。第1弾はグリーでネットワークの設計・構築・運用などを担当する黒河内 倫さんによる、「Fullrouteやめたら人生変わった」です。グリーのネットワーク(AS55394)では2012年から、IPv4のFull Routeの運用をやめているそうです。現在はPartial Route(一部の経路)だけを設定し、残りはDefault Routeに流しているといいます。なぜFull Routeをやめたのか、ミーティング会場ではどんな議論をしたいのか。気になるプログラムの見所を、黒河内さんにうかがいました。
(聞き手=JANOG34ミーティング 企画編成委員)

黒河内 倫さん (グリー株式会社)

黒河内 倫さん (グリー株式会社)

---グリーでは、なぜFull Routeをやめることにしたのでしょうか。

黒河内:いくつかの理由があります。詳細はJANOG34ミーティングの会場でお話したいと思いますが、ここで1つだけ紹介しておくと、「ルーターに負荷がかかりすぎる」という点なんです。現在、IPv4インターネットのFull Routeの経路数は50万経路を越えています。この50万経路のFull Routeを抱えたルーターで、何らかの原因によってBGPの再計算が起こったとしましょう。経路数が膨大なため、ルーターには過大な負荷がかかります。しかも、経路数の増加の勢いは年々激しくなっていて、過去2年間では10万経路も増えています。ASの管理者は「うちのネットワーク、ひいてはルーターは増え続けるFull Routeにいつまで耐えられるだろうか」と、ドキドキしながら運用することになる。そこでいくつかの対策を検討し、思い切ってFull Routeをやめることにしました。

経路数のグラフを前に説明中

経路数のグラフを前に説明中

---実際にやめてみてどうでしたか?一番「人生変わった」感じがしたのはどんなところでしょう。

黒河内:「ASの運用が怖くなくなった」点が一番大きいですね。以前に比べて、夜も安心して眠れますし。ただ、必ずしも良いことばかりではありません。Full Routeを持たないことによって、新たに出てきた課題もあります。グリーでその課題にどんな風に対処したかを、会場の皆さんと情報共有したいと考えています。グリーのようなコンテンツ事業者のほか、データセンター事業者さんや、小規模なISPさんなどにも参考になると思います。

ぜひ会場でお会いしましょう!

ぜひ会場でお会いしましょう!

--どんな点を議論したいとお考えですか?

黒河内:特に、いまFull Routeを運用していて「困っていることがある」「限界が見えている」ような企業の担当者の方と議論したいです。「経路制御が必要だからASを持っているけど、その企業が利益を上げている本業にとっては、Full Routeは必ずしも必須ではない」と知ってもらいたいと思います。トランジットを提供しているような通信事業者さんは「Full Routeありき」でサービスを考えておられるかもしれませんが、現実的にFull Routeを持てない企業もあります。そういった企業がどんなサービスを必要としているかも話してみたいですね。機器ベンダーさんには、Full Routeの爆発的な増加をどのようにとらえているかをうかがいたいです。一般的に、ネットワーク機器の減価償却期間は5年から7年です。しかし、現在のFull Routeの経路数の増加を見ると、今年買ったネットワーク機器が5年後、7年後にも使えるのでしょうか。機器開発にあたって、経路の増加をどう見積もられているのかを聞いてみたいですね。このプログラムは資料公開、Ustreamによる中継はなしで、率直な議論ができるようにしたいと考えています。皆さん、ぜひ会場でお会いしましょう。

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JANOG34は株式会社 STNetのホストにより開催しました。