「まつもとゆきひろ」さんと座談会 ニュースレター

企画編成委員の鵜野です。今回のニュースレターは、Day1(7月30日 10:30-12:00)に大展示場1で行われるホストセッション「Matz が語る AIコーディング」で登壇する「まつもとゆきひろ(Matz)」さんとの事前座談会をレポートします!

<座談会参加者>
まつもとゆきひろ(一般財団法人Rubyアソシエーション 理事長 特定非営利活動法人軽量Rubyフォーラム 理事長 OSS-Vision株式会社 専務取締役CTO 株式会社ネットワーク応用通信研究所 フェロー その他 技術顧問先多数)
井上 浩(OSS-Vision株式会社 代表取締役CEO)
山崎 利樹(株式会社インターネットイニシアティブ)
松崎 吉伸(JANOG運営委員/株式会社インターネットイニシアティブ)
立松 裕將(JANOG56実行委員長/BBIX株式会社)
土屋 師子生(JANOG56プログラム委員長/アリスタネットワークスジャパン合同会社)
冨永 良明(JANOG56プログラム委員長/NTT株式会社)
鵜野 直樹(JANOG56企画編成委員長/株式会社帯広シティーケーブル)

JANOG56と まつもとさん との「縁」

立松さんから、JANOG56テーマが「縁」であること、開催地の松江に在住している、まつもとゆきひろさんがセッション登壇頂けることになり、カジュアルな雰囲気でお話する機会を事前に設けたい、という主旨で座談会を企画したことをまつもとさんに伝えました。

  • まつもとさん(Matz)、松崎さん(Maz)、立松さん(Matsu)の「3松」が集うという偶然の「縁」。
  • まつもとさんの登壇は、IIJのメンバーを通じて2年前にスケジュールが確保されており、今回の登壇が実現。

まつもとさんに松江に住むきっかけ、地元名物のことを伺うと、

  • 元々出身は鳥取県。その後、つくば、浜松、名古屋に住んでいた。転職先を考えていた際に、井上さんからの誘いがあって松江移住を決意。松江は一通りの社会インフラが揃っていて、都会の混雑度合いも少なく住み心地がちょうど良かったので、30年近く住んでいる。
  • 松江名物カツライスは、最近になってネットで名物料理であることを知ってびっくりし、慌てて食べに行った。

JANOG参加は初めてではなく、パシフィコ横浜(JANOG5)に参加したことは覚えているが、それ以降は参加したことが無かったそうです。

Rubyコミュニティ「MINASWAN」の背景

「Matz is nice, so we are nice」という有名なモットーについて成り立ちを教えて頂きました。

  • 自身の「インポスターシンドローム(自分の功績を過小評価する心理)」からくる謙虚な姿勢が、海外のコミュニティで「謙虚でナイスな人物」と評価され、自然発生的にこのモットーが生まれたと思っている。
  • この文化が、健全で協力的なコミュニティを形成する一因であると認識ししているが、自分から狙ってはなく気恥ずかしい想いもある。
  • ノベルティに似顔絵とともに「Matz is Nice」と書いてあったりするが、恥ずかしいけど甘んじて受けましょう、曖昧にほほ笑むみたいな感じになっている。

と話されていました。

開発者としての仕事道具へのこだわり

まつもとさんの開発環境の話題になり、オンラインミーティング用では最近MAC-PCを使っているそうですが、こだわりがありました。

  • キーボード: 物理的には日本語配列のキーボードを好みつつ、論理的な配列はUS配列にマッピングして使用。特に、30年以上前のSunやSONYのワークステーションのキー配列が原点。
  • ポインティングデバイス: 机の上が散らかっていることもあり、マウスではなくトラックボール(特に親指トラックボール)を愛用。
  • エディタ: Emacsを長年使用しており、そのキーバインドが体に染み付いているため、ブラウザ操作で意図せず全選択(Ctrl+A)してしまうこともある。

まつもとさんのパソコンを他の人が使うと混乱してしまい使えない「罠」があるらしい。

技術進化の速度とプログラミング教育

プログラミング言語の文法や仕様といった表層的な部分は、AIなどの最先端分野に比べて変化の速度が比較的緩やかである一方で、インターネットの普及により情報へのアクセスが容易になった結果、現代の中高生がプログラミング言語を自作してくるなど、非常に高い技術力を持つ若い世代が登場していることにびっくりしているそうです。

JANOG参加者へのメッセージ

最後にまつもとさんは、「現代社会はネットワークなしには成り立たない。そのインフラを支えているJANOG参加者の皆さんには感謝している。普段目立たないかもしれないが、社会に不可欠な存在」と話し、JANOGミーティングは「その貢献を互いに感謝し合う日であってほしい」とエールを頂きました。

座談会を終えて

技術的洞察だけではなく、コミュニティのあり方や、開発者としての人間味溢れる一面も垣間見れました。この座談会を踏まえ、JANOG Day1でのセッションがとても楽しみになりました!

参加者の皆さん、Day1から是非くにびきメッセにお越しください!

※写真左列(井上さん、松崎さん、山崎さん、土屋さん)
※写真右列(立松さん、鵜野さん、まつもとさん、冨永さん)