1日目(7月27日)のプログラム「インターネットの品質測定 ~今時の測定方法は?~」について、発表者の髙橋真さん(SBクラウド株式会社)にお話を伺いました(聞き手: JANOG40ミーティング実行委員)。
JANOG40ミーティング実行委員(以下、JANOG): 髙橋さんは久しぶりの登壇となりますが、今回プログラム応募したきっかけはなんでしょう?
髙橋真さん(以下、髙橋): 登壇するのはJANOG28(ITができること-非常時に何をすべきか。ITはどうあるべきか-)以来ですね。JANOGの20周年記念ミーティングが福島県郡山市で開催される、ということにいろいろ感慨深いものがあり、応募しました。
JANOG: 今回のプログラムの背景等を教えてください。
髙橋: 現在私はSBクラウド株式会社に所属しています。SBクラウドはソフトバンク株式会社とアリババグループのジョイントベンチャーです。ユーザが弊社に期待しているところって、日本と中国の間の高品質ネットワークの提供なんです。それを実現し続けるために、中国のパブリッククラウド環境をいろいろ契約して、各拠点間の通信品質を評価しています。「品質」の評価軸としてパケロス・遅延・帯域を取っているんですが、どうやって測定するのがいいのかな、と。
JANOG:現時点ではどうやって測定されているのでしょうか
髙橋: パケロス率と遅延はSmokepingを利用して実装しているんですが、もっとモダンなやり方ってないの? とずっと思ってます。パケロス率と遅延はpingでわかるけど、帯域は実際にデータを流してみないと測定できないので、iperf3を使ってます。ftpだとどこまでも限りなくトラフィック出ちゃうので。
JANOG: 測定はできているけど、いろいろ問題があるということですね。
髙橋: はい。フルメッシュで品質測定するとなるといろいろ…。Smokepingはmaster-slave設定で使用しているんですが、master側の負荷上昇で悩んでました。帯域測定のほうは、トラフィックスケジューリングに失敗して一か所にトラフィックが集中してDoS判定食らったりしました。今は手動でスケジュール調整して5秒間測定とかしていますが、スケジューリングと帯域測定をうまくやる方法についての解はまだ見いだせてないですね。Best Current Practiceがあれば知りたいですね。
JANOG: フルメッシュのノード数っていくつぐらいですか?
髙橋: 最初は10~20くらいを想定していたんですが、いつの間にか50に近づきつつあります。中国との通信に関する調査は手を緩めるということはできないので、増加傾向にあります。クラウド契約の事務処理も大変ですね。支払方法が海外送金のみだったり、申し込みに中国の電話番号が必要だったり…。
JANOG: 中国のパブリッククラウドを多数契約して、ということは中国のネットワークに関する知見がかなり貯まっているのではないでしょうか
髙橋: そうですね。全ノードでtraceroute/tracepathの結果を定期的に取得してますし、監視は基本的に双方向で実施してますので。日本国内だったらどこでも大体同じ品質なのでここまではやらなかったでしょうね。 中国事業者のpaid peerは相手国によって金額が違うとか、AS Pathはシンプルだとか。北に強いChine Unicomと南に強いChina Telecomによる南北問題とか。大半はIPv4でIPv6はほとんどないですね。
JANOG: 議論したいポイントはどのあたりでしょう?
髙橋: まず、みなさん通信品質をどこまで測定してますか? 測定されている場合、測定対象ネットワークの概要とか測定方法は? というのを共有したいですね。SBクラウドの測定方法と結果はできる限りお見せしたいと考えています。そのうえで、どういった測定方法がいいのかを議論したいです。 それとは別に、こういった視点で観測していますというお話をしてくれる人がいれば紹介してください。ぜひ一緒に登壇しましょう。 あと、モダンな測定方法をご存知の方がいれば解説していただけるとうれしいですね
JANOG: ありがとうございました。