JApan Network Operators' Group
JANOG41は株式会社インターネットイニシアティブのホストにより開催します。

若者支援プログラム座談会

JANOG 若者支援プログラム 運営委員会のもと、18歳以上30歳未満の方を対象に、金銭的なハードルを抱える学生や、所属組織から業務としての参加が難しい入社間もない社会人(これらを総称して、以下"若者"と呼びます)といった若手育成を目的とし、JANOG本会議参加にかかる交通費、宿泊費、懇親会参加費用を支援する制度があります。今回のJANOG41でも支援が実施されることとなりました。

この若者支援プログラムは、JANOG35から始まり、JANOG36以降も継続して実施されており、今回で7回目となります。学生時代に支援を受けた方で、インターネット業界に就職された方も出てきていますが、特に若者支援プログラムを受けた方から2名、JANOG41の実行委員会に応募してきてくれました!その縁もあり、関係者を交えた座談会が実現しましたので、その様子をお届けします。終始わきあいあいとした雰囲気で進行しました。

<2018/1/23 JANOG35でも提供があった事から修正しました>

座談会参加者

  • 若者支援プログラムでの支援経験者
    • 石橋 拓己さん
      日本アイ・ビー・エム株式会社所属、SOC(Security Operation Center)のアナリスト。3年前の学部4年の時(JANOG35,36)に支援を受けて、JANOG37~39では自費参加。その後、後輩を送り込んでいる。JANOG41プログラム委員。
    • 堤 友理さん
      インターネットマルチフィード株式会社所属のネットワークエンジニア。2年前に支援を受け、前回のJANOG40では、若者支援の手伝いを担当。若者支援を受けて、ネットワーク業界を目指す人を支援したい。JANOG41企画編成委員。
  • JANOG 若者支援プログラム 運営委員
    • 川村 聖一さん
    • 鶴巻 悟さん
    • 前村 昌紀さん
  • JANOG運営委員
    • 仲西 亮子さん
    • 平井 則輔さん
    • 松下 和弘さん
  • JANOG41実行委員
    • 岡田 雅之さん
    • 角倉 教義さん
    • 川越 真二さん
    • 黒河内 倫さん
    • 高橋 祐也さん
    • 三戸 静香さん

 


支援を受ける側として、支援されてよかったですか?

:よかったと思っているので、この場にいます!
学生は、お金がなくて遠くにいくのが難しい面があります。でも、その先で、知った顔がたくさんできて、就職してからご一緒する方もいるのは、このプログラムを受けたからです。大きく人生が変わったと思います。
自分がネットワークの仕事を志すきっかけとなったのは、APRICOT/APAN 2015でネットワークをやったことですが、それまではネットワークの仕事に就くとは思っていませんでした。

石橋:お金の支援はすごく大きかったです。JANOGに1回参加すると、3~4万消えるというのは辛いので。また、JANOGには、40歳くらいの人が多いですが、20代の人が集まりやすいような場が設けられています。後輩たちを外に出させようにすると、JANOGくらいしかないということがあって、自分の後輩たちをJANOGや若者支援に参加するよう勧めています。実際参加した後輩の話を聞くと、知識がなかったり、JANOGのような場が初めてで、結構しんどかったりという面もあるみたいですが、その次のJANOGも参加している後輩もいたので、よかったのだと思います。

:私も後輩に言うんですけど、行ってくれません。
石橋:後輩でも、自分の1個下の学年は行きましたが、2個下の学年は行ってくれません。
研究室ではトポロジを考えるけど、実機を触らないということがあるので、「実機を触っている現場の人達の生の声を聴いておいで」と言って聞かせました。
:研究室に籠ってしまうんじゃなくて、JANOGとか外に出て知ることも楽しいよって感じ?
石橋:そんな感じ。

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支援をうけた経験のある石橋さん(左)と堤さん(右)

若者を支援する側として、支援してよかったですか?

鶴巻:若者支援プログラムに参加した人や、APRICOT/APAN 2015の時に一緒にやった人が、同じ業界に就職してくれてうれしいです。また、繰り返し来てくれる人が、自分の大学の中でLT大会をやったり、勉強会を始めたり、自発的に活動の裾野を広げてくれているのもうれしいです。

川村:JANOGミーティングの場で、マイクで発言したり、質問してくれたりするのを見ると、すごくうれしいですね。若い人の意見は、ピュアに物事を見てくれているので、すごく新鮮。その一方で、エンゲージメントをどうしていくかは課題に感じています。

前村:ICANN(Internet Corporation for Assigned Names and Numbers)では、ICANN会議におびただしい数のフェローを呼びます。会議の最初と最後にあるパブリックフォーラムで、なんでもしゃべっていい時間があるのですが、フェローが「ICANNは最高だ」というような意見があまりに多く、時間を取りすぎるという問題があるんです。これに対して、JANOGでは、若い人がちゃんと技術的なことを言っていて、すごいと思います。

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JANOG 若者支援プログラム 運営委員のみなさん(左の写真:鶴巻さん(左)、前村さん(右)/右の写真:川村さん)

若者支援プログラムでの経験や今後の課題について

鶴巻:支援は、毎回10名程度、のべ45名に実施しています。支援者は、同じ大学から来ている方が多く、なかなかいろいろなところにアプローチできていない面があります。JANOGに行ったことがある人が、新しい人を連れてきてくれている感じになっており、そこをどうしていくかは課題です。また、複数回来た人は4名程います。その時は、「後輩を連れてきてね」と言いました。JANOGというコミュニティには入っていても、学生にはあまり響かず、「先輩に聞いた」、「教授に聞いた」というのが多いです。そこを打破する活動は、あまりできていない状況です。
川村:身近な人に聞いた人が熱心に来てくれる印象ですね。
:私は、JANOGの若者支援プログラムは、他のイベントでつながった人から教えてもらいました。
石橋:自分は、外に行こうというのがモチベーションになっていました。いろいろな勉強会で東京にもよく行っていましたが、お金が続きませんでした。そんなときに自分で若者支援プログラムを見つけて、「応募すれば通るだろう」という気持ちで応募しました。
高橋:最近、JANOGでも若者が増えた気がします。
平井:若者支援プログラムを始めてから、20代が少し増えました。
松下:ただ、ミーティングを開催する各地の地元にある大学に宣伝はしているのですが、なかなかきてくれないですね。遊びに来てくれるだけでもいいのですが。

仲西:他には、InteropでSTM(ShowNet Team Member、展示会場内に構築される大規模ネットワーク構築のボランティア)もありますが、応募したことはありますか?
石橋:ありません。就職活動の時期とかぶって難しかった。今でも行きたいですが、仕事の関係で難しいかなと思っています。
:応募したことはあるのですが、落ちました。実機を触るような機会があるので、いいなと思っています。

鶴巻:JANOG40では、参加者を一同に集めるということをやって、そのお世話を堤さんにお願いして、すごくよかったです。
:私の時は、懇親会の壇上に上がって初めて、他の支援者を知るという状況でした。参加者を集めたのは、とてもいい取り組みだったと思います。若者支援でJANOGきている人がもっとわかりやすいように、シールなど作ろうかと考えています。
鶴巻:支援対象者以外との交流があったのか、ひとりぼっちで来て、ひとりぼっちで帰る人もいたと思います。
:若者を集めてのランチ企画は、すごく助かりました。自分は、どこで何を食べようかと困っていたので。
平井:ランチ企画をやっているということをTech Lionで話したら、どのコミュニティからも「すごくいい取り組み」と言ってもらえました。
:若者が集まっているテーブルで、自分で行ける範囲で、知り合いの大人のところへ連れて行ってあげることもしました。
川村:すごくいい取り組みですね。自分も初めてAPRICOTに行ったとき、松崎さんに連れられて、いろいろな人を紹介してもらい、とても助かった経験があります。
仲西:確かに、誰かに連れて行ってもらうことで、一気にレベルが上がる感じがしますね。


:大人の人たちがビジネスの話をしているかなと思うと、学生が割って入るのは気が引ける面はありますね。
前村:一方で、大人からは、若者にどういう話をするのがいいかは、ちょっと難しいところがあるなと感じています。
仲西:懇親会には申し込んでいないという若者もいるので、本会議の場で、周知できた方が効果的かなと思いますね。

鶴巻:支援制度では、前後1泊までしか許可していないこともあり、最終日の途中で帰る人も多いという現実があります。
川村:最後までいられるようにしたいですね。
平井:プログラムを最後まで聞けないというのは、結構不幸だと思います。多くの場合、最後にいいプログラムをもってきているので。

石橋:自分は「IPv6サミットを福井大学でやるから」と誘われて登壇して、ボロボロになった経験があります。それで全てが吹っ切れて、それ以降はいろいろ話かけることができるようになりました。結局は、自分で動けばいいということではありますが、若者にあえて明示的に発言させる機会があればと思います。ただ、ハードルは高いです。JANOG41では、BGPチュートリアルなどの初学者向けセッションもあるので、そのようなセッションで質問する経験を積んでもらいたいですね。

岡田:CODE BLUEやアプリや開発言語のカンファレンスでは学生も多いです。そこにいる学生に聞いてみると、JANOGのことを知らない人が多い状況です。どうすれば広く浅くJANOGの存在が外に伝わるでしょうか。
鶴巻:IA研(インターネットアーキテクチャ研究会)とか、JANOGに近いところに宣伝するのはありますね。
石橋:大学4年生と、修士課程の2年生は、論文の作成時期と重なります。研究室のチャネルを使っても、周知した半分くらいは論文の問題にあたるし、そうでなくても、大学の期末試験時期にあたってしまいます。夏に行われるJANOGには、行きやすいと思います。

平井:JANOGのメーリングリスト、JANOGのWebにたどり着くにはどうしたらよいでしょう。
石橋:調べる側からすると、勉強会の開催情報を取りまとめているサイトに載っていると情報にリーチしやすいです。そのようなサイトの管理者と情報連携すると有効ではないでしょうか?

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座談会の様子

若者支援プログラムに期待することはなんですか?

鶴巻:基本的に黒子の役割なので、インターネットやネットワークの業界に残ってもらえることができればと思っています。とにかく、来てもらえるといいですね。
川村:1回でJANOGのプログラムの内容を理解するのは難しいので、継続して参加してほしいです。熱意、必要性があれば、複数回支援を受けることも問題ありません。あとは、旅費精算をちゃんとやってほしい!

:同世代で、同じようなことに興味がある人が集まることができる場であってほしいです。
川村:就職的なこともある?
:その期待もあります。間口がすごく狭い組織もあるので(汗)ですが、学生としてはそういった話はタブーなのかな、という意識がありました。
松下:ツテがなくても、OB訪問のような感じでこの業界に勤めている人から直接話を聞けたり、逆に聞いてもらえたりするいい機会になっている、ということですね。
石橋:JANOGは大きいコミュニティなので、通常のフローではなかなか会えない人と会えるのが素晴らしいですよね。私は、ブースでそこの担当の人と良く喋っています。若者支援として、若者が喋りやすい場を更に整えていただけると嬉しいです。

今後JANOGとどのように関わっていきたいですか?

:若い人が入っていけるような、架け橋を作れるような活動をしていきたいです。

石橋:ネットワーク業界に入ってくれてありがとうという話があるなかで、自分はセキュリティですが…BGPのことであたふたする人がいたので、セキュリティの人がネットワークを混ざれるように継続していきたいと思っています。
 



いかがでしたか?JANOGでは、若者のみなさまからの参加を大歓迎しています。我こそはという若者の方、ぜひ若者支援プログラムへ応募お待ちしています。また、支援対象となる知り合いへの情報展開もぜひぜひお願いします!

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座談会参加のみなさん