JApan Network Operators' Group
JANOG41は株式会社インターネットイニシアティブのホストにより開催します。

発表者インタビュー:インターネットとグローバルプラットフォーマーの程よい関係を考える

「プラットフォーマー」という言葉は、「製品やサービス、システムなどを提供、運営する事業者」の意味で使われます。みなさんは、「プラットフォーマー」あるいは「グローバルプラットフォーマー」と聞くと、何を思い浮かべるでしょうか。特定の企業やサービスを思い浮かべる方、なんとなくクラウドを思い浮かべる方、あまりピンとこない方もいるかもしれません。

JANOG41ミーティングDay2(1月25日)では、「インターネットとグローバルプラットフォーマーの程よい関係を考える」というプログラムがあります。登壇者の石田 慶樹さん(日本ネットワークイネイブラー株式会社)、高澤 信宏さん(ヤフー株式会社)に、お話を伺いました。このインタビューが、みなさんにとって、グローバルプラットフォーマーとの程よい関係を考えるきっかけとなり、プログラムに興味を持っていただければ幸いです。


JANOG41ミーティング実行委員会 (以下、JANOG): 応募のきっかけを石田さんにお聞きしたいと思います。

石田 慶樹さん(以下、石田): 2017年8月25日のGoogleが起こしたといわれている障害は、国内では総務省などでも取り上げられていますが、Googleがインフラとしてのインターネットに与える影響が無視できなくなるほどになってしまっています。そんなGoogleのようなプレイヤーの存在感がとても大きくなっており、その人たちなしでは残念ながらインターネットが成り立たない状況になってきています。そんな中で、そんな人たちと対立するのはありえませんが、どのように付き合っていけばよいのかというのが大きな課題になっていると考えています。そのあたりの実感を、どれくらいの人たちが共有しているのかという問題意識で、プログラムに応募しました。

JANOG: 今のお話をお伺いすると、エンドユーザにおいてはファイルサーバーにクラウドを使うことはあたりまえですし、企業内環境ではオンプレミス(自社運用)を使わず、クラウドを使うことが前提になっていることが多くなっていると思いますが、その点はどうお考えでしょうか?

石田: 例えば、昨年Googleが医療情報の検索結果の順位変更を実施しました。いかがわしい内容のサイトを上位から外すという対応で、その変更は正しいものでしたが、一方でいかがわしいという判定をしているのが誰であるかと考えると、判断基準を誰がどのように決めているかわかりません。この事例では、Googleの中の人が独自に決めていると思いますが、このように、誰がどのように判断基準を決めているかわからないという事象に対して、皆自覚的でないと怖いことが起きるのではないかという危機感を持っています。

JANOG: 私は、正しい医療情報が表示されるようになったことを喜んでいるだけだったのですけれども、石田さんのお話をお聞きし非常に怖くなってきました。

石田: 今の例は、検索というコンテンツに関してですが、今様々な分野で似たようなことが起きています。アプリの世界でもそうだし、2017年8月25日のように、Routingの世界でもそうです。そのように、プラットフォーマーの存在がないとインターネットが成り立っていないという認識を共有したいと考えています。

JANOG: なるほど、応募の動機は理解できたのですけども、それを石田さんだけで話すと、こういった話題が得意な人目線の話になってしまうと思います。そういった点で登壇者が3名いらっしゃると思うのですが、登壇者の方々の立ち位置をご説明いただけますでしょうか?

石田: NRIセキュアテクノロジーズの中島 智広さんが、グローバルプラットフォーマーに関する依存への問題提起を、技術者の日常におこる話題をもとに提起します。彼は、本プログラムを半年以上前から考え続けていたので、きっとグッとくる内容だと思います。次に今回、プラットフォームを運用する国内の事業者の立場として、ヤフーの高澤さんに、このような依存の話について、どのような軸で対応しているのか赤裸々にお話いただきます。

高澤 信宏さん(以下、高澤): 我々、幸い非常に大きなインフラを運用させていただいていて、社内には数千人のエンジニアがいます。その方々が外部のリソース、大手のクラウド事業者を使いたいという声はあるんですけども、社内で整えた情報を基に、いかに自社環境がよいか、という優位性を社内に説明しながら使ってもらっています。そういった事例をご紹介したいと思っています。

JANOG: いまさらりとおっしゃったのですが、すべて自社・内製でやっているとのことですが、本当にすべて自社でまかなわれているのですか?今時の状況だと難しいと思うのですが…

高澤: インフラ面に関しては、ほぼ自前でデータセンターからサーバー・ストレージまで我々で運用しています。一部外部のものを使いたいという声もあり、使っている部分はありますが、ほぼ我々で運用しています。その中で、タイトルにもあるように、ほどよい関係とありますので、私たちの経験を基によい関係の議論をできればいいと思っています。

JANOG: なるほど、プラットフォーマーとほどよい関係を考えるにあたって、完全自社自立で運用している方からお話をお聞きできるのは、とても参考になると思います。とても楽しみです!では、最後に参加者に向けてメッセージをいただきたいのですが、石田さん、高澤さん一言ずつお願いします。

石田: クラウド上に便利なサービスがたくさん出てきていて、そのサービス上に新たなサービスを追加していくようなことが、これからますます増えていくと思うのですが、その際にそのサービスを支えているのがどのプレイヤーなのかを、サービス提供者としてもユーザーとしても頭の片隅で考えてもらえるようになるとうれしいです。

高澤: クラウドかオンプレミスかを悩まれている方や、クラウドネイティブな方々に対して、頭に残るようなお話が今回できればいいなと考えています。

JANOG: ありがとうございます。参加者にとっても具体的な期待がもてるメッセージですね。ところで、最後になりますがこのプログラムは懇親会直前の時間になっています。なかなか答えの見つかりづらいプログラムなので、懇親会でも盛り上がるといいですね。本日は貴重なお時間をいただきありがとうございました。

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左から担当プログラム委員の石橋さん、発表者の石田さん、高澤さん、JANOG実行委員の岡田さん


日常、何気なく使っているサービスについて、見直すような機会になるかもしれません。ぜひ議論に参加して、いろいろな意見をぶつけてもらえればと思います。