JANOG46でオンラインとオフラインを繋いできた

現地配信環境 ニュースレター

企画編成委員の佐藤太一です。

JANOG46 Meeting in Okinawa、皆様お楽しみ頂けましたでしょうか?
見逃した方は昨日よりアーカイブも全プログラム(野良BoF除く)で公開していますのでぜひご覧下さい!
https://www.janog.gr.jp/meeting/janog46/programa/
※2020年10月19日(月)の13:00までの公開を予定しています

さて、以前のニュースレター(JANOGらしい、リモート運用)でも触れておりますが、 今回は”JANOGらしいリモート運用”環境を作るために春頃から色々と準備を進めました。 会期中に大きなトラブルなく終えることが出来、まずはほっとしております。最終的には最大同時接続約650、のべ視聴数約3500以上の方々に参加/視聴を頂いた形となりました。
「構成についてもっと細かく聞きたい」「苦労話や失敗談を聞かせて」というお声を頂きましたので、リクエストにお答えして構成等を振り返りっていきたいと思います。特にコミュニティ配信等を実施している方の一助になれば幸いです。

オンラインセミナー&ストリーミング配信で利用するツールについて

コロナ禍で現地フル開催が恐らく難しいであろう=オンライン開催濃厚となったあたりでまずはオンラインセミナーで利用するツールの比較検討を行いました。数個のツールを実際に試してみて、Zoomビデオウェビナーを利用しよう、と決まりました。他のツールと比較し、ある程度スタッフ側でも慣れている人が多かった事(=登壇者も慣れているであろう事)、”議論”という観点でみた時に使いやすい機能が多かった事、といったあたりが決め手になったと思います。

また、従来通りのストリーミング方式での提供を行いました。こちらも過去の実績等からJストリームEquipMediaを利用する事になりました。Zoomビデオウェビナー単体で良いのではないかとも思っていましたが、フタを開けてみると接続数はストリーミング配信の方が多い(概ねzoomの1.5倍程度)状態で推移する事が多く、より気軽にセッションを聴講したいという要求が多かったのかと推測しております。

現実的な話をすると、1接続数あたりの単価もZoomビデオウェビナー>ストリーミング配信、なのでよりコストを抑える事にも繋がったのかと考えています。

システム構成について(現地)

JANOG46 配信構成図:改
※現地登壇者がいずれのセッションも単独になったため壇上のHDMIスイッチャはなしに

メイン会場となるTENPIでは、以下を可能にする構成としました。
 1.現地登壇(@沖縄)
 2.現地質問(@沖縄)
 3.リモート登壇
 4.リモート質問(音声)
 5.リモート質問(チャット)
これまでのJANOG Meetingの配信では、基本的に現地からのストリーミング配信のみ(1&2)であったため、会場→視聴者の「片方向」のみの提供でした。過去のノウハウもありますし、ここまでであればそれ程苦労はありません。これに特に3&4が加わる事で「双方向」のリアルタイムでのやり取りが発生するため各所の難易度がかなりUPする事になりました。

・現地で音のハウリングが起こらないようにして欲しい
・現地登壇/質問者にはなるべくこれまで通りの”普通にプレゼン/議論”を出来る環境を提供したい
いずれもそりゃーそうだよね!という要望(圧?)がスタッフから上がりました。

どうしたものか・・・とかなり頭を悩ませましたが、最終的には音声/映像回りを担うPCを1台に集約する事で今回はこれを実現出来るようにしました。図面を見て頂くと、特に音声回りは”J46@現地配信PC”に集約されている事がお分かり頂けるかと思います。音のハウリングは端的にいうと、音がループ(スピーカーから出た音をマイクが拾って、を繰り返す)する事で起こります(ブロードキャストストームみたいなものです)。回りにゴテゴテついてはいますが、通常皆さんが自分のPCでリモートミーティングする時と同じ状態の延長に色々ついてると思って頂ければ分かりやすいかと思います。

また、現地でのオペレーション人員も数が少なくなる事が想定されたため、HDMIスイッチャ(ATEM Mini)を入れ、会場からZoomビデオウェビナーへの打ち上げを行う画面=会場プロジェクタで投影される画面、となるように今回は設計を行いました。

ここまでが現地側システムのコアとなる部分で、残りはリモート運用をより快適にするためのオプションです。

カメラ1(壇上)
 -現地登壇者を捉えるためのカメラ
 -現地登壇者が少なかった事もあり、ほぼ利用しませんでした
 -これも専用のPCを用意して単体でZoomビデオウェビナーに打ち上げを出来ればより良かったかな
・カメラ2(質問者)—J46@現地質問者
 -司会が沖縄会場で質問マイクに来た人を目視確認出来るようにいれました
 -こちらは単体でZoomビデオウェビナーに打ち上げを実施
 -余裕がある時はこちらを登壇者に向ける運用にしていました
・J46@現地投影PC
 -J46@現地配信PCを投影しても良かったのですが・・・
 -J46@現地配信PCへの依存度が高くなりすぎる事から現地投影用のPCを別で用意しました

システム構成について(東京側)

今回、ストリーミング配信の設備は東京側に設置していました(図中右上)。
こちらはZoomビデオウェビナーに一般参加したPCの画面をHDMI出力でLiveShell-Xに入れて、Jストリーム Equipmediaに送っています。Zoomビデオウェビナーから直接のストリーミングを行うとZoomの透かしロゴがかなり大きく表示されること、配信画面/音声をある程度コントロール出来る事から、TENPI/SHURIはこちらの構成で行いました。なお、NAKAGUSUKUに関しては機材手配等の都合もあり、Zoomビデオウェビナーから直接のストリーミングを行っています。

東京側配信設備(Jストリーム 会議室)

Zoomビデオウェビナーの運用

今回はシステム面は企画編成委員、Zoomビデオウェビナーの運用はプログラム編成委員にて実施しました。
スムーズな進行が出来るようにかなりの回数のリハを行っています (システム面の機材含めての全体リハを2回、Zoomビデオウェビナー単体のリハを別で数回)。Zoomビデオウェビナー内のユーザの権限分けや使う機能の限定など、かなり細かいところまでリハで決めていきました。

なお、Zoomビデオウェビナーは1日1イベント(=1URL)で実施しました。当初1プログラム1イベントである案もあったのですが、こちらにしなくて助かったというのが終わってからの感想です。現地のPC3台+自身のモニタ用PC 4台で毎回URL変更しながら入り直すのが意外と時間を取られて大変でした(朝礼と終礼を毎日通常のZoomでやっていたのですが、切り替え時間が15分程度しかなく、毎回URLが違ってここに入り直すのが結構大変でした。。。)

なお、スタッフ間の連携は基本的にSlackで行っています。

Day1終礼の様子

その他、運用回りの細かい話

事前リハの徹底
登壇者含め必ず事前にリハをする事!を今回は徹底しました。通常の現地開催だと発生しないタスクになり各所に労力をおかけする事になりましたが「リハをやってなかったら厳しかっただろうな」というのが終わってみての感想です。特に動画を流したりする場合や登壇者が多い(LT他)場合にはスライド投影含めてのテストを必ずやった方が良いと思います (Zoomには慣れている人でもZoom Webinarで登壇をした事がある人はそれ程いない)。

・登壇直前のテスト→そのまま本番
Day1ではオンラインでの投影がきちんと出来るか?沖縄会場と双方向通話が正常に出来るか?の確認が出来るか毎回不安なままセッションを開始する状態になっていました。Day2からはセッション開始5分前に登壇者司会者に該当のセッションの投影、会話テストを実施して頂き、そのままセッションに突入する形の運用に変更をしています。配信側にテストの映像音声がそのまま流れる形にはなりますが「セッション開始時間にきちんとセッションを開始する」事を優先した形です(現地開催でも投影テストをするのでやってみると意外と違和感はなかったように思います)。 今回は会期全般に渡り、会場の換気/消毒のためにセッション毎に15分の休憩を入れていた事も幸いしました 。
なお、テスト開始時にテストが突然始まると現地、配信含め一般参加者がビックリしてしまうため「これからテストをします」の一言を入れるようにしていました。

・各セッションの終わり
オンラインだとセッション終わりが尻切れトンボになるケースが一定数発生する事が分かりました(オンラインミーティング終了時に切り時が分からなくなる感覚と似ていたと思います)。セッション終了時の拍手が配信にのらない事が原因だと分かったため、Day2あたりから現地マイクで拍手を拾うようにしました。また、司会も途中から拍手をするようにしていました。

・Zoomビデオウェビナーの「左右表示モード」が分かりにくい
スライドと同時に登壇者をいい感じに表示してくれるモードなんですが、なんでこんな名前なんだ・・・。Day1途中に発見して途中からこのモードでの配信になっています。

・Zoomビデオウェビナーに複数PCで同一メールアドレスでログインしてはいけない
複数PCで同一メールアドレスでログイン すると、同一人物で利用していると認識され、特定PCで変更したユーザ名が他のPCにも勝手に反映されたりと不都合がいくつか発生しました。メールアドレスを複数用意するかダミーのメールアドレスを利用する等の工夫が必要でした。

・スポンサースライド
セッション間で流れていたスポンサースライドはPPTを時間指定でページ送りするPCを画面共有する事で実現していました。現地の工数削減のため、こちらはプログラム編成委員のPCからリモートでの対応としました。

トラブル/失敗談

皆様お待ちかね(?)のネタについてつらつらと。上からやらかした/辛かった順です(笑)。

・音声LINE/MICの選択を間違える
Day1-2まで現地登壇/質問マイクの音が割れている風味になっているのはこれが原因です(Day3朝の分から修正)。
音声信号にはライン入力とマイク入力という2つの入力方式があります。 どこかで見かけた(ような気がした)”ATEM MiniはLINE/MIC自動判別”という情報からここに原因があると思わず各所の音声ボリューム等を変更してなおらないなー、と首をかしげていました。。。音が聞こえるには聞こえてはおり、クリティカルな状態ではなかったため対応を後回しにしてしまったという事情も正直あります。

・音声ケーブルもっていったのが反応しない
会場からもらうケーブルがXLR端子だと事前に聞いていたので変換ケーブルを用意して持参したものの、音声がきちんと拾えず。恐らくですがバランス/アンバランスの違いではないかと思います。会場側に急遽変換ケーブルを用意して頂き対応が出来ましたが最悪配信が出来なくなるところでした。

・構築時に会場ネットワークつながらねぇ
前日15:00頃に会場に入りましたが会場ネットワークが当日中に繫がらず、肝心のZoomを通したテストが前日に全く出来ませんでした(後からホテルWifiは生きてた事に気がつきましたが、ホテル側スタッフ解散した後だったので後の祭り)。 結局、最終的に全部が繋がるようになったのはDay1の朝11:00頃でした。大分ギリギリ感があふれてます。

・現地ワンオペきつい
当初現地を2交代でやる予定だったのが、諸々の事情により現地ワンオペに。
システムも複雑で説明資料を作る時間も取れなかったので、他のスタッフへの手伝いも依頼が難しくそこそこハードなワンオペになってしまいました。結構な長時間、気をずっと張ってる状態になるので精神的な消耗が激しかったです (今回で他のスタッフ振れそうな部分が分かってきたので次からは大丈夫・・・かなぁ?)

リモート運用視点でみたおすすめセッション

Corporate IT担当者全員集合 BOF 第2弾
 司会:リモート1名
 登壇者:現地1名、リモート1名
 スライド投影:現地の壇上PC
 質問者:現地、リモート 複数名

今回の構成をフルに生かしたオンライン・オフライン相互に入り乱れてのセッションでした。
現地で見ながら「ちゃんと動いてる!!!すげー!」と一人で感慨にふけっていました(笑)。

まとめ

日本初、かどうかは分かりませんがオンライン/オフラインを繋いだコミュニティイベントでのリモート運用としては、かなり理想に近い形のものを提供出来たのではないかと思います。いつものJANOG Meetingらしさが出せていたならよかったなぁ、と願いつつ。

10年前だと恐らく今回のようには出来なかったですね。5年前だとどうだろう?厳しい気がするなぁ。こんな事が出来るのも日々、皆様がネットワークの運用をしてくれているからですね!改めてインターネットって凄い!と思った時間でした。

次のJANOG47 Meeting in Fukuokaでは皆様にお会い出来る事を心から願ってます!

最終日だけ少し晴れました!(他の日はほぼ曇or雨)

P.S.沖縄といえば締めステーキ!!!

88ステーキ 辻本店
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