JANOG51企画編成委員の近藤です。

Day3 13:30〜14:30 にふじさんホールにて行われる「CUEとKubernetesカスタムオペレータを用いた新しいネットワークコントローラをつくってみた」の発表者である、NTTコミュニケーションズ株式会社の奥井 寛樹さんにお話を伺いました。

上段左から、奥井さん、近藤(Org)
下段左から、川越(Orgアドバイザー)、伊藤(PC)

初めに自己紹介をお願いします

今回がJANOG初参加です。カンファレンスの動画は色々と見ているのですが、仕事がどっぷりネットワークというわけではなくソフトウェア開発よりなため、いつも勉強する立場で関わらせていただいていました。今回発表させていただく予定のネットワークコントローラは、ネットワーク運用のシステム開発を新しい形で行うきっかけになると思い、JANOGという場をお借りしていろいろな方と技術的な交流や議論させていただけるといいなと思って応募しました。アクセプトいただき大変光栄に思っています。

プログラムに応募したきっかけを教えてください

私は仕事でキャリアの伝送ネットワークのシステム開発をしています。キャリアのネットワークでは伝送装置をたくさんばら撒く必要があり、ドメインも多様です。ネットワークの規模にも寄りますが、台数は平気で千を超え、下手をすると万を超えるほどの装置に設定を入れたり監視をして適切に制御する必要があります。そのためのバックエンドやオペレータ向けのフロントエンドの開発をしているのですが、(装置の)台数やコンフィグ量がかなり多いためシステム開発がかなり複雑です。しかし世の中ではアジリティの高い開発によってスピーディーにプロダクトアウトをすることが求められるため、どうやって効率的に開発を行うかということを考えていました。

ネットワークにおいては昔であればsshを用いてコマンドラインで書いたものを投入するということしかできなかったものが、REST APIやNETCONF、YANG等のスキーマ言語を使うようになって少しずつ良くなってきています。そういった技術をうまく使えないかということを考えていて、オープンソースのコミュニティにてネットワークのサービスを提供するためのシステム開発ができないかと模索していました。そして今回そのようなものを一つ形にすることができたので、ぜひ皆さんに見ていただきたいと思い発表することにしました。今回作ったものはJANOG51が開催される頃にはOSSとして公開している予定です。

業務で開発しているものをうまくOSSにできたということなんですね

そうですね。実はこの取り組み自体は2017年ごろから行っていました。しかし少ないチーム人数でちゃんとしたフレームワークを作るのは難しいです。そのため、うまくコミュニティの力を借りて開発を進められるといいなと考え、実際にONOS、ODL、TIPなどのいくつかのコミュニティーと一緒に開発をしたこともありましたが、中々うまくいきませんでした。そのような状況で、私が別件で取り組んでいたCI/CDやCloud Native系の開発の知見を活かせるのではないかということを思い付きました。

このような取り組みは世の中にあまりないため、こういったやり方でもネットワークのコントローラ開発ができるということを今回の発表で皆さんにアピールし、興味を持っていただいてどんどん議論ができたらいいなという所です。

参加者とどのようなことを議論したいですか?

ネットワークのプロトコルやSDNなどについては既に議論が活発に行われていますが、ソフトウェアを用いてどう効率的にシステムに組み込むかについてはあまり議論がされていないように思います。キャリアでネットワークのサービス開発をもっと効率的にやっていきたいと考えている方は多いと思うので、そういった方達に興味を持ってもらい、議論をもっと盛り上げていけるといいなと思っています。

例えば、どのように宣言的にインフラを管理するかや、実際のネットワーク装置に入るべきコンフィグをどのように導出するかや、そのコンフィグをどうやってやり取りするかなど、全体的な設計やプロトコルについてご意見いただけると嬉しいです。

JANOG51の“ 動き出す、一歩 ”というテーマを踏まえて、最後に一言お願いします

今回の私の登壇自体が新しい一歩と言えますね(笑)。また、今回の発表ではCUEやKubernetesを用いた宣言的なネットワーク制御を行うコントローラの紹介をさせていただきます。KubernetesのOperatorはクラウドの分野では色んなところで盛んに使われています。それをネットワークの分野で活用するという、国内で見てもあまり例を見ないような新しい取り組みという一歩を踏み出しています。それについてみなさんに忌憚のないご意見をいただき、色々と議論をした上でネットワークコントローラの開発をみなさんと一緒に盛り上げていければいいなと思っています。

また、今回の発表はCUEやKubernetesについて知らなくても楽しめるものになっています。Cloud Nativeでコンテンツデリバリやプロビジョニングがどうなっていて、どの辺がイケているのかや、それをネットワークの世界に持ってくることでどう幸せになれるのかなどの背景的な所についても説明させていただくので、それらの技術の細かい部分については知らない方でも楽しんでいただけると思います。

奥井さん、インタビューにご協力いただきありがとうございました!