概要
このセッションでは、RIRの在り方に関して議論します。RIRは地域インターネットレジストリの略で、世界を現在5地域に分けて、それぞれの地域のIPアドレス、AS番号の管理を行っている団体です。アジア太平洋地域ではAPNICがRIRとして、日本国内ではJPNICがNIR(国別インターネットレジストリ)として、APNICというRIRとの契約にもとづきIPアドレスとAS番号を管理しています。JPNICは日本国内の、インターネットレジストリは、IETFやICANNとともに、グローバルインターネットの運営の上で重要な団体です。
日本ではJPNICがIPアドレス管理を行っていることもあって、APNICのようなRIRは少し遠い存在かもしれません。それでも、インターネットレジストリのような機構が、なくなったり、壊れたり、好ましく動かなくなったりした場合には、グローバルインターネット自体の根幹を担うIPアドレスの一意性が損なわれ、インターネットの上で事業を行う人、社会活動を展開する人々にとって、大きな問題となって降りかかってくるように思います。
「RIRは堅牢なのか」などとしてJANOGミーティングでも、RIRの課題について発表してきましたが、その延長線上で、ICP-2という文書の改定作業が進んでいます。この文書は「新たなRIR認定の要件」というタイトルのもので、これを根拠に、ラテンアメリカとカリブ地域を担当するLACNICと、アフリカ大陸を担当するAFRINICの設立が判断されました。しかし、これまでの発表で触れて来たAFRINICの機能不全にあたって、ICP-2がその対処に何も寄与しないという状況に遭遇した結果、歴史的とも言える見直しが始まりました。
現在検討中の「原則案」には、RIRのあるべき姿が骨子として書き出されていますが、今後これに肉付けしていく作業が進みます。この発表では、各RIRやICANNでの意見聴取が一巡した原則案の紹介を皮切りに、RIRのようなグローバルインターネットに欠かせない運営機構の在り方を、JANOGerの皆さんとイチから考えなおすことで、新たな未来を紡ぎたいと思います。
参考リンク
–JANOG52:地域インターネットレジストリは本当に堅牢なのか?
-JANOG53:The Internetの運営機構を堅牢にするために
-JPNICブログ:地域インターネットレジストリの統治機構に関する2023年のまとめと2024年の展望
-JPNICブログ:ICP-2 新RIR設立要件の改定作業:「原則案」に対する意見募集が始まりました。(和訳付き)
-日本におけるインターネット資源管理の歴史~ドメイン名とIPアドレスを中心とした日本のインターネットの歩み~
議論ポイント
•RIRやNIRといったインターネットレジストリはそもそもどうあるべきですか・何を提供するべきか?
–特に、RPKIの普及で、運用局面への影響は別次元で大きくなります
–思考実験として特定RIR抜きのインターネットや、トラストアンカーとして機能しないRPKIの世界はどうなるか
•Inter-RIRでのIPv4アドレス移転制度のもたらす影響
•持続可能なインターネットレジストリの運営はどうあるべきか
•ドメイン名の管理体制とIPアドレス・AS番号の管理体制との共通点と相違点
•JANOGerはどうやってこの領域に貢献できるの?
–どうやったらこの領域の活動を応援できるの?
–(勝手に1.1.1.1とか振らない)
•「原則案」は良さそう?何か足りないことはありませんか?
場所
第3展示場B
日時
Day3 2025年1月24日(金) 11:15~12:15(1時間)